2020 Fiscal Year Research-status Report
シングルセルエピゲノム解析を用いた膵β細胞増殖制御機序の解明
Project/Area Number |
20K21616
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲垣 暢也 京都大学, 医学研究科, 教授 (30241954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 亮太 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (40850996)
龍岡 久登 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70850981)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / 増殖 / インスリン / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は進行性の膵β細胞の機能不全および膵β細胞量の低下を病因としている。膵β細胞機能不全についてはこれまで多種の治療薬が開発されている一方で、膵β細胞量を標的にした治療法は確立されていない。そこで、本研究では膵β細胞増殖の分子基盤解明に着目し、膵β細胞増殖制御に関わる遺伝子ネットワークを同定することを目的とした。 研究手法としては、若齢(8週齢)及び高齢(1年齢)のC57BL/6マウスを用いて、膵β細胞増殖を促す膵部分切除(PPTx)を行った。術後2日で膵島を単離し、膵島全体からRNAを抽出して行うRNAシークエンシング(RNA-seq)および、膵島単離後にトリプシン処理を行って単細胞化した後にRNA抽出を行うシングルセルRNAシークエンシング(scRNA-seq)を行い解析した。 RNA-seqの結果では、PPTxにより若齢マウスでは693の発現上昇遺伝子および573の発現低下遺伝子を認めた一方で、高齢マウスでは52の発現上昇遺伝子と31の発現低下遺伝子を認めた。これらの発現変動遺伝子をGene Ontology解析にて生物学的機能で分類すると、若齢マウスでは細胞周期や有糸分裂等に関連した遺伝子群の発現が亢進していたのに対し、高齢マウスでは炎症反応や免疫反応に関連した遺伝子群が上昇していた。この結果から、PPTxにより若齢マウスで膵β細胞増殖が活発になっていることが示唆された。 scRNA-seqでは、1623細胞の遺伝子プロファイルを検出し、遺伝子発現パターンからクラスタリング行ったところ、6つの細胞亜集団(クラスター)が観察された。 また、術後2日目の単離膵島に対してATAC-seqによるオープンクロマチン領域の検索を行い、若齢、高齢マウスそれぞれでPPTx群に特異的なオープンクロマチン領域の同定を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
scRNA-seqで同定された6つのクラスターの中で4つのクラスターが膵β細胞の集団であり、さらにその中で1つのクラスターで細胞増殖に関わる遺伝子の発現が亢進していることから、このクラスターが増殖膵β細胞の集団であることが示唆された。また、この膵β細胞と考えられる4つのクラスターに対して、膵β細胞増殖の遺伝子ネットワークの最上流で遺伝子発現を制御する鍵分子を同定する目的で疑似時系列解析を行ったところ、疑似時間軸に沿って、E2fファミリー遺伝子の発現上昇が認められた。E2Fファミリーのなかでもβ細胞増殖に関与するという報告のあるE2F1(Diabetes 59. (2010): 1435-1444)の発現がPPTx術後の若齢マウスにて上昇していたことから、PPTxにおける膵β細胞増殖におけるE2F1の役割を明らかにするため、E2F1の全身ノックアウトマウス(E2f1-/-)を既に入手している。また、やはり疑似時系列解析により、小胞体ストレスに関連する遺伝子の発現も、増殖の時系列に従って変化していることが明らかになった。 術後2日目の単離膵島に対して行ったATAC-seqにでは、若年PPTx群では9225の、高齢PPTx群では4142の領域を特異的なオープンクロマチン領域として同定した。 以上のことから、研究計画としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PPTxによる膵β細胞増殖におけるE2F1の役割を検討するため、E2f1-/-マウスにPPTxを施行し、膵β細胞増殖を免疫組織学的に評価することを計画している。また、膵β細胞増殖をリアルタイムにイメージング可能な、膵β細胞特異的Fucci2a発現マウス、および組織透明化技術による三次元的な膵島内細胞の免疫組織学的評価の系もすでに確立しているので、これらを用いての評価を行うことを計画している。 E2f1以外のE2fファミリー遺伝子と膵β細胞増殖の関係、また小胞体ストレス遺伝子と膵β細胞増殖の関係についても、さらに詳細に検討を加えていくことを計画している。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Transcriptome Analysis Dissects the Replicating Process of Pancreatic Beta Cells in Partial Pancreatectomy Model2020
Author(s)
Tatsuoka H, Sakamoto S, Yabe D, Kabai R, Kato U, Okumura T, Botagarova A, Tokumoto S, Usui R, Ogura M, Nagashima K, Mukai E, Fujtani Y, Watanabe A, Inagaki N
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Journal Title
iScience
Volume: 23
Pages: 101774
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Phosphoglycerate Mutase Cooperates with Chk1 Kinase to Regulate Glycolysis.2020
Author(s)
Mikawa T, Shibata E, Shimada M, Ito K, Ito T, Kanda H, Takubo K, Lleonart ME, Inagaki N, Yokode M, Kondoh H.
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Journal Title
iScience.
Volume: 23
Pages: 101306
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Enteroendocrine K Cells Exert Complementary Effects to Control Bone Quality and Mass in Mice.2020
Author(s)
Gobron B, Bouvard B, Vyavahare S, Blom LV, Pedersen KK, Windelov JA, Boer GA, Harada N, Zhang S, Shimazu-Kuwahara S, Wice B, Inagaki N, Legrand E, Flatt PR, Chappard D, Hartmann B, Holst JJ, Rosenkilde MM, Irwin N, Mabilleau G.
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Journal Title
J Bone Miner Res.
Volume: 35
Pages: 1363-1374
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Rb and p53 Execute Distinct Roles in the Development of Pancreatic Neuroendocrine Tumors.2020
Author(s)
Yamauchi Y, Kodama Y, Shiokawa M, Kakiuchi N, Marui S, Kuwada T, Sogabe Y, Tomono T, Mima A, Morita T, Matsumori T, Ueda T, Tsuda M, Nishikawa Y, Kuriyama K, Sakuma Y, Ota Y, Maruno T, Uza N, Masuda A, Tatsuoka H, Yabe D, Minamiguchi S, Masui T, Inagaki N, Uemoto S, Chiba T, Seno H.
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Journal Title
Cancer Res.
Volume: 80
Pages: 3620-3630
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Maternal Supplementation of Tetrahydrobiopterin Regulates Differentiation of Fetal Brown Adipose Tissue and Contributes to Offspring Metabolic Health2020
Author(s)
Minamino H, Fujita Y, Goto H, Ohashi A, Furuya F, Isomura N, Takesue K, Li Y, Kawarasaki S, Kawada T, Hasegawa H, Inagaki N.
Organizer
American Diabetes Association (ADA) 80th Scientific Sessions
Int'l Joint Research
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