2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the origin and maintenance mechanisms of junctional epithelium and identification of its stem cells using allogenic tooth germ transplantation
Project/Area Number |
20K21672
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常木 雅之 新潟大学, 歯学部, 研究支援者 (40714944)
依田 浩子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60293213)
原田 英光 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70271210)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | 接合上皮 / 退縮エナメル上皮 / エナメル質形成 / 成体幹細胞 / 歯肉 / 歯の萌出 / 移植 / マウス(遺伝子改変) |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔内の歯の表面(エナメル質)と歯周組織との境界部は、からだの中で唯一上皮細胞の連続性が途絶えている からだの弱点であり、歯周疾患発症の原因となっている。この歯と歯周組織の境界部は特に接合上皮と呼ばれ、口腔内常在細菌(パラサイト)と からだ(ホスト)の防御細胞とが相互作用する生体防御最前線である。接合上皮の由来はエナメル質を形成したエナメル器に由来する退縮エナメル上皮である考えられており、歯の萌出後徐々に歯肉上皮に置き換わると考えられているが、その科学的証拠はない。最近、応募者の研究グループは、マウスを用いた他家歯胚移植実験の確立に成功し(J Dent Res 94: 112-120, 2015)、すべての細胞が緑色蛍光タンパク質を発現するGFP遺伝子改変マウスと野生型マウスを用いた他家歯胚移植で接合上皮がドナーのエナメル器に由来することを明らかにした。さらに、ドキシサイクリン投与ですべての細胞をGFPラベルした後、細胞分裂回数に応じて細胞の蛍光強度が減弱するノックインマウス(TetOP-H2B-GFPマウス)を用いて、幹細胞の特徴である非対称分裂する接合上皮のラベル保持細胞を同定し、接合上皮には増殖能をもち非対称分裂する幹細胞様細胞が存在することを示唆したが、接合上皮幹細胞の局在部位や接合上皮の表現型維持機構については全く分かっていない。したがって、本研究は、接合上皮の由来・維持機構を解明すると共に接合上皮幹細胞を同定することを目的とする。これまで、歯髄、歯根膜、歯小嚢に間葉系幹細胞の存在が証明されており、歯の形成細胞への分化能が証明されているが、エナメル質形成細胞への分化能のある細胞ソースを入手することが、歯の再生研究の大きなハードルであった。接合上皮幹細胞の同定に成功すれば、エナメル質形成能のあるエナメル器由来細胞の幹細胞ソースを得ることに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接合上皮が退縮エナメル上皮に由来することを示す数多くの報告があるが、退縮エナメル上皮由来接合上皮の運命については論争の的である。本研究は、退縮エナメル上皮由来接合上皮の運命と歯の萌出後の接合上皮における幹細胞/前駆細胞の細胞ダイナミクスを明らかにした。野生型およびGFP遺伝子改変マウス下顎第1臼歯歯胚(胎生15日~生後1日)を生後2週齢のGFP遺伝子改変および野生型マウス上顎第1臼歯歯槽窩に移植した。μCT解析後、パラフィン切片を作製し、Nestin、Ki67、GFP免疫染色を施した。さらに、BrdU腹腔内投与・(ドキシサイクリン投与)TetOP-H2B-GFPマウスを用いてBrdUとGFP陽性細胞追跡実験を行った。歯頸部領域でエナメル質形成は正常に進行し、接合上皮の形態は正常の歯の発生過程のものと同様であった。GFP遺伝子改変マウスをホストとした移植歯では、接合上皮はGFP陰性であったが、口腔粘膜上皮はGFP陽性であった。一方、GFP遺伝子改変マウスをドナーとした移植歯では、実験期間中GFP陽性であった。追跡実験では、接合上皮基底側H2B-GFP・BrdU陽性細胞が、時間の経過に伴い接合上皮の口腔側へ移動した。ラベル保持細胞は接合上皮に傍基底細胞層に維持されていた。本研究結果は、接合上皮の退縮エナメル上皮細胞ニッチが歯の萌出後長期間にわたって維持されていることを示唆した。接合上皮幹細胞の単離とRNA-seq解析に基づく退縮エナメル上皮由来成体幹細胞の細胞表面マーカーの確立が、接合上皮幹細胞の利用を可能にする。従って、接合上皮は歯胚上皮幹細胞ソースとして利用できる可能性がある。接合上皮幹細胞と歯髄幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、根尖部歯乳頭幹細胞、歯小嚢幹細胞、歯肉幹細胞などの間葉系幹細胞を用いた歯のティッシュ・エンジニアリングは将来の再生医療に導くであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)接合上皮幹細胞を同定する。生後4週齢にDox及び幹細胞を含む増殖細胞に取り込まれ、その後増殖した細胞の動きを追跡可能なチミジン類似物であるEdU(5-エチニル-2′-デオキシウリジン)を投与したTetOP-H2B-GFPマウスを用いて1~7日後の接合上皮幹細胞の動態を検索する。接合上皮マーカーであるODAMまたはFDC-SP 及び歯胚上皮マーカーCK14を用いFACSでソーティングを行い、退縮エナメル上皮由来細胞を精製分離する。 (2)接合上皮の維持機構を明らかにする。GFP遺伝子改変マウスをドナーにした野生型マウスへの他家歯胚移植により、接合上皮をGFPでラベルした後に、生後4週で接合上皮を含む組織をサンプリングし、FACSでソーティングし、GFP陽性細胞を分取する。その後、GFP陽性の接合上皮細胞をRNA-seqで発現遺伝子網羅解析を行う。その後、特異的に発現の高いタンパク質の局在を免疫組織化学(IHC)/in situハイブリダイゼーション(ISH)にて三次元的分布を解析する。(3)接合上皮幹細胞を精製し遺伝子発現を解析する。上記(2)で高発現タンパク質の中からTetOP-H2B-GFPマウスを用いた非対称分裂する幹細胞で高発現するタンパク質をスクリーニングする。さらに、TetOP-H2B-GFPマウス生後4週齢にDoxを投与後3~5日後にEdUを投与して、非対称分裂をして強いGFP陽性を示し、かつ細胞増殖周期にある細胞をFACSで選別する。 (4)接合上皮幹細胞の分化能を検証する。接合上皮幹細胞が局在する時期に、TetOP-H2B-GFPマウスの接合上皮と歯肉上皮を別々に採取して、増殖能のあるGFP強細胞(成体幹細胞と思われるLRCs)を単離して、細胞培養下および腎皮膜下でエナメル芽細胞への分化能を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大のために当該年度の計画の一部を次年度に移行したため。
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Research Products
(16 results)