Society5.0時代のインフルエンザ発生予測モデル構築の試み

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K21732
• Research Institution: Toho University
• Principal Investigator: 西脇 祐司 東邦大学, 医学部, 教授 (40237764)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 道川 武紘 東邦大学, 医学部, 講師 (80594853)
• Project Period (FY): 2020-07-30 – 2022-03-31
• Keywords: インフルエンザ / リアルタイムサーベイランス / 環境疫学

Outline of Annual Research Achievements

インフルエンザは、公衆衛生上重要な感染症であるが、その伝搬メカニズムについてはまだよくわからないことが多い。インフルエンザ発生動向に影響を与える因子として、これまでに当教室では絶対湿度の低下がインフルエンザの報告数増加と関連することを報告した。しかし、気候的要因以外にも人口流出入、人口密度といった社会環境の影響が想定されるが、その関連についてはほとんど解明されていない。川崎市では、リアルタイムサーベイランス体制を整備し、2014年から毎日のインフルエンザ報告数を把握している。登録医療機関数は、700施設（2018年時点）を超える。本研究では、このリアルタイムサーベイランスデータと社会環境データを連結し、インフルエンザ発生動向に影響を与える社会環境の解明に挑戦する計画である。
2020年度は、申請者らがすでに所有しているArcGIS上に、まず7行政区ないし21区域のマッピングが可能となるようデータ整備を行うとともに、マッピングのための技術習得を行った。これにより、エリアごとの社会環境要因のマッピングが可能となった。現在検討している要因としては、人口、面積、人口流出入数・割合、駅乗降者数、インフルエンザ予防接種率（65歳以上）、生活保護人数、齲歯有所見率等である。今後は、計画通り7行政区ないし21区域について、エリアごとの社会環境要因のマッピングを進め、地区別分布の可視化を行う。さらに空間解析等により、インフルエンザ発生動向と社会環境要因との関連を検討していく予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

川崎市のリアルタイムサーバイランスデータは、2014年より感染症発生動向調査とは別に、協力の得られた登録医療機関が毎日のA型、B型インフルエンザ患者数を入力して公開する世界的にも稀有なシステムであり、2014年6月以降について利用可能であり、7つの行政区とそれをさらに中学校区単位にわけた21区域について集計・解析可能である。ArcGISは教室内にすでに配置されているので、2020年度はGIS上に、まず7行政区ないし21区域のマッピングが可能となるようデータ整備を行うとともに、マッピングのための技術習得を行った。これにより、エリアごとの社会環境要因のマッピングが可能となった。現在検討している要因としては、人口、面積、人口流出入数・割合、駅乗降者数、インフルエンザ予防接種率（65歳以上）、生活保護人数、齲歯有所見率等である。
新型コロナ感染症の影響により、2020年度のインフルエンザの報告は激減しているが、解析には2014年度から2019年度のインフルエンザ報告数を利用しているので、計画には問題ない。

Strategy for Future Research Activity

これまでに当教室では、絶対湿度の低下がインフルエンザの報告数増加と関連することを報告したが、気候的要因以外にもインフルエンザ発生動向に影響を与える因子として、人口流出入・人口密度や、交通量の多寡といった人の移動や接触の状況、予防接種状況等が想定されるが、こうした社会環境とインフルエンザ発生動向との関連はほとんど解明されていない。次年度は、計画通り、7行政区ないし21区域について、エリアごとの社会環境要因のマッピングを進め、地区別分布の可視化を行う。さらに空間解析等により、インフルエンザ発生動向と社会環境要因との関連を検討していく予定である。
当初2020年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックは1年延期され、その開催についてはこの報告書作成時点ではまだ不確定要素がある。また、新型コロナウイルス感染症がインフルエンザ発生に及ぼす影響は予測ができないが、解析には2014年度から2019年度のインフルエンザ報告数を利用しているので、計画の大筋に問題はない。むしろ、コロナ感染症蔓延がインフルエンザの発生動向に及ぼす影響自体の検討などに切り替えて検討することも可能であると考えている。

Causes of Carryover

新型コロナ感染症の蔓延により、学会がことごとくオンライン開催になり、旅費が不要となったこと。およびGISデータの購入を予定していたが、まず今年度は行政などの既公表データの解析を優先的に行ったために、この購入を次年度にした分、予定との乖離が生じた。当該額は、次年度の学会等出張旅費と、GISデータ購入分に充当の予定である。