2020 Fiscal Year Research-status Report
Visualization and prediction of health and disease states using landscape models
Project/Area Number |
20K21837
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石川 哲朗 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 特別研究員 (90824160)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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Keywords | ランドスケープ / 時系列分析 / 状態遷移モデル / 健康・疾患状態 / 発症・病態進行過程 / 可視化 / 層別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、慢性疾患データに対するランドスケープによるアプローチとして、1.糖尿病の発症過程の記述、2.睡眠リズム障害への応用、3.アレルギー疾患への適用の研究を遂行した。 【糖尿病の発症過程の可視化】健診ビッグデータを用いて、日本人の糖尿病発症過程を表現する健康・疾患ランドスケープを構築した。その上で、地形に現れる安定状態として糖尿病と関わる生活習慣病の多様な病態に対応する安定状態を複数見出し、安定状態の周囲の吸引領域として健康状態、発症前状態(疾患予備軍、いわゆる「未病」状態)、および発症後の疾患状態を層別化して可視化することに成功した。さらに、時系列情報を加味することで、同一の健診受診者のデータの経時変化を地形図上の経路として示すことで、病態進行の軌跡を表すことができた。糖尿病発症過程を本手法で記述する成果をまとめた論文を準備中である。 【睡眠覚醒リズムの記述】ウェアラブルデバイスを用いて取得した時系列データから睡眠リズム障害の評価指標を探索する上で、時系列から特徴量を抽出してその組み合わせによってリズム評価を構築する基盤として、ランドスケープを探索的に用いる研究を行なった。昼夜それぞれに顕著に現れる少なくとも2つの安定状態が見出され、双安定な構造が抽出された。安定状態間の遷移パターンとして睡眠リズム障害の新たな診断基準の確立を目標とする。その前段階として、時系列特徴量によるリズムの定量化の成果を論文にまとめる作業を進めている。 【アレルギー疾患の状態記述】慢性疾患であるアトピー性皮膚炎に対する状態評価や新しい生物学的製剤の薬剤効果判定に本手法の考え方を応用できないかを探った。薬剤の即効性に関わる因子の探索や薬剤耐性のある残存症状の予測に取り組んでおり、中間解析の成果を論文にまとめる準備中であるとともにデータの蓄積を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は当課題に関連して生活習慣病や睡眠リズム障害、アレルギー疾患に関連する身体状態をランドスケープの方法論に基づいた状態遷移モデルを構築する研究を進め、6件の学会発表を行なった。特に糖尿病発症過程の記述においては、非時系列検査データからの地形図の作成を発展させて、計画通りに時系列健診ビッグデータから健康・疾患ランドスケープの再構成に成功した。これにより、ダイナミックな病態進行、発症過程の状態変化を地形上で描画することができるようになった。成果をまとめて方法論およびそれぞれの対象疾患ごとに論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
状態間の関係性の描画をより精緻にするため、可視化アルゴリズムを数理的にさらに洗練させることを令和3年度の目標とする。今後、多くの人が辿りやすい複数の病態進行、回復・寛解過程のパターンを示す地図上の経路を、登山ルートマップのような形式で表現することで非専門家にもより分かりやすい可視化の開発を検討している。さらにランドスケープの適用可能な範囲を拡げ、これまで扱って来た慢性疾患以外の疾患にも射程を拡大させることを試みる。特に、社会全体および所属機関の要請によりCOVID-19関係の研究の優先度が上げられているため、当初の研究計画には含まれていなかったがCOVID-19関連のデータ分析に本手法を応用する方向性についても検討を重ねる予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は学会参加が招待講演が多く、また新型コロナウイルス感染症感染拡大のために研究打合わせ、国内および国際会議がすべてオンライン開催となったため、旅費が発生しなかった。コロナ下のリモートワークを中心とした新しい働き方の模索を続ける中で、当初予定していたオンプレミスの計算機ワークステーションの導入を見送ったため。次年度はコロナが収束した場合には可能な範囲でオンサイト開催の学会に参加して研究成果を発表するとともに、オンプレミスもしくはクラウド型の計算機環境の整備に使用することを予定している。
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Research Products
(9 results)