2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K21908
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20407141)
|
Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 胆管 / 毛細胆管 / 三次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓は生命維持に不可欠な機能を担うとともに、人工物で機能を代替することができないため、生体外の培養で肝臓を再生する手法の開発が強く望まれている。肝臓の組織工学では、肝機能を担う肝細胞の三次元培養に主眼が置かれてきたが、さらに機能的な肝組織を構築するためには、胆管上皮細胞との共培養を加えることによって胆汁排泄機能を有する肝組織を構築する必要がある。そこで、本研究では、肝細胞による毛細胆管形成プロセスと胆管上皮細胞による胆管形成プロセスを時間的および空間的に制御することによって、毛細胆管と胆管を接合させる培養手法を確立し、胆汁排泄機能を有する肝・胆管複合組織を構築することを目指している。本研究は2つのフェーズに分けて並行して研究を遂行し、最終的に胆汁排泄を有する肝・胆管複合組織の再生を目指す。フェーズ1では、肝細胞と胆管上皮細胞の共培養モデルの確立に着目する。まず、24ウェルプレートを用いて胆管上皮細胞による胆管形成と小型肝細胞による毛細胆管形成を行う。2020年度の研究では、小型肝細胞と胆管上皮細胞の播種濃度を検討した。小型肝細胞の播種量が胆管上皮細胞よりも優勢になると、胆管上皮細胞がコロニーを形成できず、結果として胆管形成が阻害されることを見出した。一方で、胆管上皮細胞の播種量が小型肝細胞よりも優勢になると小型肝細胞による毛細胆管の形成が阻害される。そのため、小型肝細胞と胆管上皮細胞が拮抗する培養条件を適切に設定することが毛細胆管と胆管を接合させる培養手法における重要な因子であることを見出した。フェーズ2では、毛細胆管に接続される細い胆管だけでなく、より大きなサイズの胆管を構築することを検討する。そのため、テンプレート型培養デバイスを作製し、コラーゲンゲル内部に作製した内腔構造に胆管上皮細胞を被覆させるための培養条件を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ラットから分離した初代培養細胞を使用しており、研究を推進するためには実験を繰り返すことによって目的に合った培養条件を検討していく必要がある。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、これらの研究活動が大幅に制限された。しかしながら、フェーズ1の研究では、小型肝細胞と胆管上皮細胞の播種濃度を検討し、毛細胆管と胆管を接合させるために重要な条件を見出した点で、研究が着実に進捗している。一方で、小型肝細胞と胆管上皮細胞の分化マーカーや極性マーカーなどの免疫蛍光染色については、使用する抗体の見通しは立っているものの、詳細な解析が進んでいない点でやや遅れていると判断した。フェーズ2では、毛細胆管に接続される細い胆管だけでなく、より大きなサイズの胆管を構築することを検討するために、テンプレート型培養デバイスを用いた胆管形成を試みた。実際に培養デバイスを作製し、コラーゲンゲル内部に作製した内腔構造に胆管上皮細胞を被覆させるための培養条件を明らかにした。これらの研究成果は重要な進捗であるが、さらなる培養条件の検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は2020年度に引き続き、2021年度も2つのフェーズに分けて並行して研究を遂行し、最終的に胆汁排泄を有する肝・胆管複合組織の再生を目指す。フェーズ1の研究では、毛細胆管と胆管を接合させる培養条件として播種濃度の検討が完了している。そこで、決定した播種濃度における代表的な形態形成のプロセスを把握するとともに、顕微鏡画像データを用いた定量的な解析を行い、適切な培養条件であることを客観的に示す。さらに、毛細胆管と胆管が接合していることを立証するために、毛細胆管マーカー、胆管マーカーなどの抗体を用いて蛍光染色を行い、共焦点顕微鏡を用いた詳細な検討を進める。また、フェーズ2については、引き続きテンプレート型培養デバイスを用いた胆管形成を行い、培養条件を改良する。ゲルの組成や細胞接着因子を検討することで、より多くの胆管上皮細胞が培養基質に接着し、短時間で細胞が内腔を被覆する条件を検討する。さらに、より複雑なゲル内腔面を形成するためにバイオプリンターの使用も検討する。
|
Causes of Carryover |
本研究は、ラットから分離した初代培養細胞を使用しており、研究を推進するためには実験を繰り返すことによって目的に合った培養条件を検討していく必要がある。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、これらの研究活動が大幅に制限された。そのため、消耗品の購入が減少したため、物品費を次年度に使用することにした。また、出席を予定していた国際会議へ・国内会議も新型コロナウイルス感染症の影響で中止・延期が相次いだため、旅費・その他の資金も次年度に使用することにした。2020年度に入念に検討してきた計画に基づき、2021年度の研究計画を加速し、コストの高いバイオプリンターを用いた研究も進めることで、物品費・旅費を使用する計画である。
|