2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a general-purpose analytical tool for structured data of historical financial records and presentation of practical examples
Project/Area Number |
20K21981
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小風 尚樹 千葉大学, 人文社会科学系教育研究機構, 助教 (80880161)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 財務記録史料の構造化データ / 分析ツールの開発 / 会計史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、デジタル人文学による歴史研究のさらなる発展に貢献すべく財務記録史料データの分析手法を歴史研究者がひろく活用できる基盤をつくることである。近年デジタル人文学分野では、複雑な体系をもつ財務記録史料をコンピュータで処理しやすい形式の構造化データとして作成する方法論DEPCHAが国際的に議論されている。しかし、データ作成に向けた議論が進む一方で、そのデータを分析して歴史学の新しい知見を得ようとする取り組みは少ない。DEPCHAは、経済史・経営史研究を加速させ得るデータ作成手法だが、そのデータを処理する方法は個々の研究者に委ねられており、誰でも汎用的に使える分析手法はまだ確立されていない。そこで本研究は、プログラミング等の技術を要しない財務記録史料データの分析ツールを開発し、これを実際に用いた成果を示してその有用性を証明することを目的とする。 2021年度の成果としては、COVID-19の影響で、長期の海外渡航が依然として困難であったため、申請者自身の歴史研究に有用な史料を現地でデジタル撮影することができなかった。そこで、2020年度に東京大学史料編纂所助教である中村覚氏の協力を仰いで作成していたデータ分析ツールを用いて、以前入手していた史料データを対象とした分析を実施した。 この成果については、2022年度に刊行予定の書籍にて公表する運びとなっているほか、DEPCHAの開発者であるChristopher Pollin氏と共有し、最終版に向けて現在開発中のDEPCHAのウェブサイトに研究事例として掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大およびその防止策の影響、そして育児のための休暇を取得した関係で、研究計画の中で予定していた海外での史料調査を遂行することができなかったため、本研究で開発する分析ツールで用いる基礎データの収集をすることが初年度に引き続き不可能であった。 しかし、実際の財務記録史料のデータを対象とした分析ツールの活用例をまとめた論考を刊行するための準備ができたため、成果発信の点では進捗を生むことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、2022年度まで延長したため、この年度内に可能であれば海外での史料調査を実施し、自身の歴史研究に用いる基礎データの収集を遂行したい。 研究成果については、国際デジタル・ヒューマニティーズ学会連合(Alliance of Digital Humanities Association)の年次大会での口頭発表にすでに査読が通っており、2022年7月に発表予定である。これに加えて、歴史学関連学会にて、開発した分析ツールを一部活用した、経済史的観点の口頭発表・論文投稿を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
一昨年度に引き続き、昨年度も新型コロナウイルスによる渡航制限の延長により、イギリスでの調査活動を行うことができなかった。このことに加え、育児休業の取得による研究中断もあったため、2022年度に課題遂行期間を延長し、機を見て史料調査を実施したいと考えている。そのための費用を2022年度に計上している。
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