2021 Fiscal Year Research-status Report
Survival Tactics by and Social Integration of Immigrants in Japanese Society: Reexamination of Assimilation Theories
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20K22172
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
伊吹 唯 熊本保健科学大学, 保健科学部, 助教 (00880189)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 移民 / 戦術的同化 / 国民統合 / 出移民史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本において移民の同化についての研究が不足していることをふまえ、地域社会における移民受け入れの論理と移民の同化戦術の相互作用に着目し、日本の地域社会における移民の統合の様相を明らかにすることを目的としてきた。この目的を達成するために、2021年度は主に以下の2点の調査・研究を実施した。 ①長野県Y市における調査結果の分析:新型コロナ感染症の影響により、Y市における調査を実施することができなかったが、これまでに集めたデータをもとに、Y市において、移民、特に日本にルーツを持つ日系帰還移民の戦術的同化がどのように行われているかを検討し、その背景に、地域社会における「日本人」ヒエラルキーの存在があることを明らかにした。また、Y市の持つ中国帰国者との歴史的な関係性が、現在の同地域における移民の受け入れの形にも影響していることを明らかにした。 ②熊本県X市における調査:X市における移民受け入れの論理を明らかにするために、同地での調査を実施した。X市は、Y市と同様、戦前から戦後にかけて移民を送り出した歴史も持ち、特に、ブラジルに多くの移民を送り出した地域である。そこで、Y市と同様にX市においても、X市と移民の歴史的な関わりが現在の移民の受け入れのあり方に関係があるのか、あるとすればどのように関係するのかを検討するため、出移民史の継承活動を行う団体の代表者に聞き取り調査を実施した。また、地域の図書館において資料収集を行い、主にX市と移民の歴史的関係性について、一次資料と二次資料の両方のデータを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響の長期化により、2021年度は、長野県Y市と神奈川県Z地域におけるフィールドワークの実施が困難となった。このことが本研究の遅れの主な原因である。 ただし、そのような状況下でも、以下の3点においては順調に研究を進めることができた。1点目に、熊本県X市からの出移民について史資料の調査を実施した。インタビュー調査などのような対面での調査が困難な時期も多かったが、一方で資料収集に時間を割くことができた。その結果、X市における出移民史の継承活動の概要やそれに関わる関係者の存在を洗い出し、聞き取り調査につなげることができた。 2点目に、X市における聞き取り調査を実施した。上記の史資料調査から見つけることができた関係者へのインタビュー調査を実施することができたため、出移民史継承活動の概要や経緯、それに対する考え方などを聞き取ることができた。 3点目に、先行研究の再検討を行い、それをふまえ、すでに所持していた長野県Y市における調査のデータを整理し、さらなる分析を行った。フィールドワーク調査が困難になったことで、先行研究の再検討のための時間をとることが可能となった。そのため、従来取り入れることのできていなかった先行研究の知見から、データの再分析を行い、新たな知見を得ることができた。 以上をふまえ、フィールドワーク調査は遅れているものの、熊本県X市における調査は順調に進められていることと、先行研究やデータの再検討から今後の調査・研究においても有意義な進展が見られており、進捗状況は「やや遅れている」に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本県X市は筆者の居住地から比較的近い地域であるため、適宜調査を実施する。Y市とZ市それぞれにおける調査の機会が、当初予定よりも限られてしまったため、まずはX市での調査とその結果の検討を今後の研究課題の中心に据え、これまでに収集したデータの検討を行う。2022年度はX市における調査についての学会報告を予定しており、これをもとに年度内の論文投稿を目指している。また、この内容をさらに発展させたものを国際学会で報告することを目指して準備を進める。 他方で、新型コロナ感染症の状況にも落ち着きが見られ始めたので、これまで断念していた長野県Y市と神奈川県Z地域でのフィールドワークの実施に向けても計画をしている。どちらの地域も、夏季休暇中に数日間滞在しての調査実施を目指している。特に、コロナ禍において、それぞれのフィールドの状況にも変化が予想されることから、コロナ禍における変化をおさえたうえで、調査を実施したい。これらの調査結果については、2022年度12月以降に実施される学会(冬季大会など)における報告を目指して準備を行う。 3つの地域における調査結果をまとめた検討は2022年度中に実施することになり、年度内の学会報告や論文投稿には間に合わせることが難しいが、2023年度の調査・研究結果の公表に向けて準備を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度は、主にフィールドワーク調査や学会参加のための費用の支出を予定していた。しかしながら、新型コロナ感染症の影響が長期化したことで参加を予定していたすべての学会がオンラインとなったことや、フィールドワーク調査が実施できたかったことで、それらの支出が一切なくなった。 次年度は、これまでの実施が困難となった分も、適宜オンライン・インタビューなども活用することで、フィールドワーク調査を実施したいと考えている。また、コロナによる調査・研究の遅れを取り戻すため、従来は自分で行う予定だったインタビュー・データの文字起こしの一部の外注も予定している。したがって、調査にかかる費用として、インタビュー調査の謝金、文字起こしの外注の費用の支出を計画している。また、長期休暇中には現地での調査も実施したいと考えているため、その際の旅費の支出も予定している。加えて、2022年度は、対面で開催される学会も増えることが予想されることから、学会報告のための旅費としても支出を計画している。
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Research Products
(2 results)