2020 Fiscal Year Research-status Report
Mathematics Learning Based on the Qualities and Abilities Nurtured by Inquiry-Based Cross-Disciplinary Study
Project/Area Number |
20K22244
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉井 貴寿 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (90710640)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 総合的な探究の時間 / 算数・数学教育 / 探究活動 / SSH事業 / 理数探究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,総合的な探究により育まれた資質・能力を基盤とした数学(教科)の指導に着目し,「総合的な探究により育まれる資質・能力の整理」と,「それらを基盤とした数学の指導方法の開発・実践」を行うことで,総合的な探究と数学(教科)の双方の指導方法について,新たな可能性を模索している。 令和2年度に実施した研究では,まずこれまでに実施されてきた複数の指導実践の記録や調査研究の成果を分析し,総合的な探究により育まれる資質・能力が多岐にわたるものであり,それらは複数の観点で整理され得るものであることを確認した。その上で,その一部に焦点を絞って,数学科の学習・指導場面へと結びつけていくことを考えた。より具体的には,複数の先行研究において総合的な探究活動を通じて育まれるとされている「発表する力」と呼ばれるような資質・能力に着目した。「発表する力」については,必ずしも定義が明確に規定されているものではなく,呼称も様々存在するものであるが,本研究においては「成果をまとめる力(表の利用,ポスター・論文の作成など)」,「他者に伝える力(発表・表現力など)」,「他者との議論を基に探究を深める力」といった要素も含まれるものとしてこれを捉えている。実施した指導実践研究では,総合的な探究活動を約2年間経験している高校生を対象に,数学の授業にポスター発表形式の探究成果を発表する活動を取入れ,この「発表する力」を発揮する場を設けた。そして,その結果から探究活動での「根拠を明らかにする」,「聞き手を意識する」,「準備をしっかりする」,「対話を大切にする」といった学びが,数学学習に影響を与えることを確認した。このように,探究活動により育まれた「発表する力」を基盤として数学の学習・指導を行うことで,その質が変わり得ることを具体的に例示した点が令和2年度の主な研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の主な研究目標は,「総合的な探究の指導事例の整理」,「総合的な探究によって育まれる資質・能力の明確化」であり,これを達成するために「総合的な探究に関わる書籍・報告書の整理・分析」,「指導実践校の視察,担当教員へのインタビュー」や「研究集会の開催」などを実施しようと計画していた。また,研究の全期間を通じて,学会発表などを積極的に行い,研究成果を広く発信し,「総合的な探究における学びを基盤にした教科指導」という考えを浸透させ,更なる研究の推進を促すことも目指している。 令和2年度の研究実績を振返ると,新型コロナウイルス感染症対策の関係から,「指導実践校の視察」など一部計画通り行えなかった活動があったが,Zoomなどを利用した遠隔での研究集会や発表会が広まったことにより,そういった代替手段を用いてほぼ研究計画通りに研究活動を遂行することができた。実際,教員・研究者とのミーティングやインタビューはZoomを利用することで実施した。また,指導事例の収集・整理に関しては,SSH指定校や文部科学省による情報の整理・公開が進んだことや,書籍等の購入に多くの予算を当てたことにより想定していた以上の成果を得られた。以上の理由から,研究活動はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に沿って,令和3年度には総合的な探究で育まれた資質・能力を基盤とした数学(教科)の指導について,具体的な方法を考案し,指導実践を行う。現在,複数の研究者・教員と議論を重ねてその準備を進めており,実践研究の対象や方法を調整している。今後,指導実践とその分析を行い,その有用性を検討する。また,その成果をまとめ,「総合的な探究の時間」と「教科(数学)」を結びつけた具体的な指導方法の一例として提案する。加えて,そのような新たな指導方法の研究・開発の要点を整理し,「総合的な探究の時間」と「教科(数学)」の双方の指導の工夫・改善について示唆を与える。
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