2021 Fiscal Year Research-status Report
地方圏の若者のキャリア形成における専門学校の意義と役割に関する研究
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20K22258
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
丹田 桂太 福岡大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10883952)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 専門学校 / 地元思考 / 社会教育 / 学生調査 / 統計分析 / 地方圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた実地調査を行うことが困難になることが見込まれたため、研究計画の見直しを行い、結果として次の2点に注力した。すなわち第一に、前年度まで行ってきた研究成果の取りまとめを集中的に行うことであり、第二に、質的データだけではなく量的データも活用しながら、本研究の問いにアプローチを行うことである。 まず前者について、前年度に日本職業教育学会において報告した、本研究の主な対象である「地方の若者」をめぐる問題と社会教育学との関係について、共著書として取りまとめた。ここでは、近年高まりつつある若年層の「地元志向」の動きに着目し、この動きに対する批判的な視点を構成する一要素として、教育学の持つ発達観を取り上げ、検討した。その上で、歴史的に「傍系」の立場から「正系」としての(学校)教育を問い返してきた社会教育学の方法論が、ある種の発達観を前提とした「地元志向」を批判的に捉える視点を相対化していくことに示唆を与える可能性を指摘した。 また後者については、調査対象予定であった地方圏に本部を置く2つの学校法人(計12校)において実施された、新入生に対するアンケート調査結果のデータ提供を受け、専門学校への入学時点(つまり高校時代まで)における学生たちの学習状況や能力意識の特徴を検討した。分析結果からは、学習状況や能力意識の特徴の違いが、学校(法人)よりも分野に大きな影響を受けていることが示唆された。本調査結果はまた、今後、同校での教育や学びを通じた、学生たちの学習への向き合い方や能力意識の変化を捉えていくための一つの基準となりうるものでもあり、専門学校教育の効果検証を検討していく際の有効な資料であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた実地調査と学生に対する聞き取りを行うことができなかったため。既述のとおり、量的調査という当初の研究計画では予定していなかった新たな観点からのアプローチを行うことができているものの、この結果をより説得的なものとするためには質的データが不可欠である。この質的データの収集が不十分であることから「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画と比較して十分な実地調査ができていない状況ではあるものの、一方で、令和3年度には教職員に対するオンラインおよび実地でのヒアリング調査を計3回行った。この調査からは、間接的ではあるものの地方圏の専門学校生のキャリア形成の様相を窺うことができている。加えて、先のアンケート調査の結果にかかわる所見について、各学校の教務責任者等との意見交換をオンラインで実施する機会を得ている。 令和3年度までに限定的に行ってきた研究や調査結果を踏まえつつ、最終年度となる次年度は、これまで予定していた実地での調査を集中的に行うとともに、関連学会での研究成果の報告ならびに取りまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた実地調査が行えなかったことから、交通費等の支出が大幅に減ったため。次年度は、実地調査を集中的に行うとともに、研究に必要となる資料・機器の購入を行う予定である。
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