2020 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアBCAAトランポーターSLC25A44を介した耐糖能制御機構の解明
Project/Area Number |
20K22647
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
米代 武司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40724167)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 褐色脂肪組織 / エネルギー代謝 / 分岐鎖アミノ酸 / インスリン感受性 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
新規ミトコンドリアBCAAトランポーターSLC25A44がインスリン感受性に及ぼす影響とその分子メカニズムを解明するため、CRISPRiシステムによりSlc25a44を欠損させたマウスに高脂肪食を負荷した後に採取した褐色脂肪組織(BAT)や白色脂肪組織(WAT)、骨格筋、肝臓などを用い、組織ごとのmTORシグナルを調べた。絶食下(インスリン刺激なし)でmTORC1活性化の指標であるRPS6のリン酸化を調べたところ、Slc25a44欠損マウスのBATではRPS6のリン酸化が中程度に亢進していたが、対照マウスではリン酸化が検出されなかった。一方、mTORC2の活性化指標であるAKTのリン酸化は両群ともに検出されなかった。このことから、Slc25a44欠損によりBCAAが代謝分解されず、mTORC1の持続的活性化を起こしていることが示された。これと一致し、高脂肪食を負荷することによる血中BCAAの上昇は、対照マウスに比べてSlc25a44欠損マウスの方が著しく大きかった。次に、インスリンを投与した後に採取したBAT、WAT、骨格筋、肝臓についても検討したところ、インスリン応答性なAKTとRPS6のリン酸化が対照マウスに比べてSlc25a44欠損マウスのBATで有意に低下していた。他の組織では群間差が認められなかった。以上の結果から、Slc25a44の欠損によりBCAAが細胞内に蓄積してインスリンとは無関係にmTORC1の定常的な活性化(RPS6のリン酸化)を起こし、これがIRS1阻害など既知のメカニズムを介してインスリン感受性を低下させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスでの検討によるSLC25A44の生理的意義の検証と分子メカニズムの解析は予定通りに進み、SLC25A44による耐糖能制御に関する知見を得ることができた。一方で、マウス培養細胞を用いたSLC25A44によるBCAA代謝運命制御の解析、ヒト培養細胞を用いたヒトSLC25A44の機能解析はまだ準備段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
Slc25a44欠損褐色脂肪細胞株を用いて13C標識BCAAを用いたメタボロミクスを行い、13C標識BCAAの取込み量を評価する。また、ノルエピネフリン刺激を行った後、経時的に細胞内の13C標識BCAAを経時的に評価し、TCA回路中間体の13Cラベリングを評価し、BCAAの代謝運命におけるSLC25A44の役割を明らかにする。次に、ヒトSLC25A44がマウスのものと同様の機能を持つかを調べるため、Slc25a44欠損マウス褐色脂肪細胞株にヒトSLC25A44を強制発現させ、培養液中にBCAAを含む場合と含まない場合でノルエピネフリン誘導性酸素消費量を測定する。また、ヒトSLC25A44のC末端のストップコドンに変異を入れることにより、変異ヒトSLC25A44配列を作成し、Slc25a44欠損マウス褐色脂肪細胞株に強制発現され、BCAAの存在下と非存在下でノルエピネフリン誘導性酸素消費量を測定する。前年度の結果と併せて、インスリン感受性の制御におけるSLC25A44の役割とその作用メカニズム、ヒトの糖尿病予防への応答の可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大のため、所属研究機関の活動制限が一定期間かかったため、特に継続して長期間培養しなければならないヒト培養細胞における実験などが遅延した。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Branched-chain α-ketoacids are preferentially reaminated and activate protein synthesis in the heart2021
Author(s)
Walejko JM, Christopher BA, Crown SB, Zhang GF, Pickar-Oliver A, Yoneshiro T, Foster MW, Page S, van Vliet S, Ilkayeva O, Muehlbauer MJ, Carson MW, Brozinick JT, Hammond CD, Gimeno RE, Moseley MA, Kajimura S, Gersbach CA, Newgard CB, White PJ, McGarrah RW
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 1680
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Kruppel‐like factor?15 regulates fuel switching between glucose and fatty acids in brown adipocytes2021
Author(s)
Nabatame Y, Hosooka T, Aoki C, Hosokawa Y, Imamori M, Tamori Y, Okamatsu-Ogura Y, Yoneshiro T, Kajimura S, Saito M, Ogawa W
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Journal Title
Journal of Diabetes Investigation
Volume: 12
Pages: 1144~1151
DOI
Peer Reviewed
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