2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K22802
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
樋口 貴史 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (00728719)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / マルチキナーゼ阻害剤 / 化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究実績を以下に挙げる。 2名の骨肉腫患者から生検・手術組織を用いて、骨肉腫の患者由来組織同所移植マウスモデルの作成に成功した。このマウスモデルに対し、現在臨床応用可能なマルチキナーゼ阻害薬であるパゾパニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、クリゾチニブと、骨肉腫標準治療薬のシスプラチンを14日間投与を行い、腫瘍の増大とマウスの全身状態や体重を観察した。その結果、1人の患者由来組織同所移植モデルでは、コントロール群やシスプラチン群と比較し、スニチニブ群とソラフェニブ群では腫瘍の増殖停止を認めた。さらにレゴラフェニブ群では腫瘍が消退した。別の患者由来組織同所移植モデルでは、スニチニブ群やソラフェニブ群はコントロールや他の薬剤と比較して、腫瘍増殖に有意な差を認めなかった一方、レゴラフェニブ群では、腫瘍の消退を認めることができた。治療終了後に、腫瘍を摘出し、病理学的な評価を行ったところ、ヘマトキシリン・エオジン染色で、スニチニブ群とソラフェニブ群で腫瘍細胞密度の低下と部分的な壊死を両腫瘍において確認した。レゴラフェニブ群では、腫瘍の完全壊死と腫瘍の線維化を両腫瘍において認めることができた。すべてのマウスモデルを安楽的にと殺後、すべての臓器に対し、病理解剖を行ったが、明らかな遠隔転移巣は認めなかった。また、薬剤投与による臓器異常(肝臓や腎臓の萎縮など)も認めなかった。薬剤の投与前後におけるマウスモデルの体重変化に有意な差はなかった。腫瘍を切除したマウスに対して、腫瘍の再発を観察するために、現在もマウスの観察を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の解析において、骨肉腫の患者由来組織同所移植モデルを樹立することが重要であり、2人の患者由来組織を用いて、腫瘍マウスモデルを樹立することができた。このモデルに対し、治療解析を行い、5つのマルチキナーゼ阻害薬の中から、レゴラフェニブが骨肉腫治療において有用となる可能性を見出すことができた。 骨肉腫患者由来組織同所移植モデルの樹立とそれに対する有用なマルチキナーゼ阻害薬を見出すことが本研究におけるkey pointsであり、研究開始後半年で結果を出すことができたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
治療が終了した骨肉腫患者由来組織同所移植モデルの腫瘍を切除し、パラフィン包埋を行い、切片を作成した。その切片を用いて、各種免疫染色(Ki-67, MDM2, p53, VEGFR, PDGFRなど)やTUNEL染色を行う準備をしている。また、レゴラフェニブの骨肉腫に対する抗腫瘍効果をin vitroで解析する予定としている。ヒト骨肉腫細胞株のMG63, 143Bとヒト骨芽細胞株のhFOB 1.19を用いて、WST-8 assayを行い、レゴラフェニブのin vitroでの有効濃度を解析する。細胞株については、現在購入を終えており、-80℃冷凍庫で保管している。フローサイトメトリーやウエスタンブロッティングを行うことで、薬剤のアポトーシスと細胞周期に対する効果を解析する。フローサイトメトリーは、本教室において、e Muse® Cell Analyzerを購入しており、いつでも使用可能である。ウエスタンブロッティングでは、MET, ERK, AKTのリン酸化やVEGFR, PDGRFの発現を解析することで、レゴラフェニブによる抗腫瘍効果で誘導されるタンパクについて解析する予定となる。in vitroの解析で結果を見出すことができた段階で、学会発表や論文作成を行い、本研究の研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
今回動物モデルを樹立するために多めに実験用動物・飼育費を計上していたが、動物モデルの樹立がスムーズに成功したため、予定より少ない動物で研究が可能であった。 In vivoの実験の中で、病理学的解析のうちで、ヘマトキシリンエオジン染色による解析は終えることができたが、そのほかの免疫染色やTUNEL染色などの解析を行うことができず、抗体や染色液などを計上していたが、使用できなかった。 In vitroの実験を初年度に開始する予定であったが、行うことができず、次年度に行う予定とした。 次年度は切除済みの腫瘍を包埋したパラフィンブロックを用いた病理学的解析の継続、切除腫瘍における各種タンパク発現の解析、計画書に準じたin vitroの実験を開始することを予定している。
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Research Products
(1 results)