2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pathogenesis of thrombosis caused by abnormal prothrombin with thrombomodulin resistance
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20K22869
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長屋 聡美 金沢大学, 保健学系, 助教 (00882309)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 異常プロトロンビン / アンチトロンビン抵抗性 / トロンボモジュリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、既に作製済みであったチャイニーズハムスター卵巣由来細胞(CHO細胞)を用いたリコンビナントプロトロンビン安定発現細胞株から細胞を変更し、ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)を用いた安定発現細胞株の作製を行った。作製した細胞株は、野生型(WT)および、アンチトロンビンとの結合親和性低下(ATR)およびトロンボモジュリンとの結合親和性低下(TMR)を示すと予測された4種類の変異型プロトロンビン(M380T、R431H、E509A、R596L)である。それぞれの細胞株の培養上清をサンプルとして用い、凝固機能やアンチトロンビン抵抗性(ATR)などの評価を行なった。 凝固時間法による活性測定では、WTを100%として、M380Tは4.9%と有意に低下し、R431H:51.5%、E509A:44.6%、R596L:51.0%と低下していた。トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)形成試験では、R431HはWTと同様に時間経過と共にTATが増加した。一方で、M380T、E509A、R596LはTAT形成量が少なく、ATとの結合障害の可能性が示唆された。また、残存トロンビン活性はTAT形成量を反映した結果となり、R431HはWTと同等であったが、M380T、E509A、R596Lは残存トロンビン活性が多い結果となった。以上より、それぞれ程度は異なるがM380T、E509A、R596LはATRを有している可能性が示唆された。 しかし、合成基質法での活性測定において、WTの活性が正常血漿の約50%と低値を示した。そこで、サンプルのCBB染色を行なったところ、様々な分子量のタンパク質が検出されたため、サンプルの精製が必要であると考えた。今後は回収した全ての培養上清サンプルを精製し、ATRとTMRを定量的に評価するため、Biacoreを用いた分子間相互作用の検出を優先する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)を用いて、野生型および4種類の変異型プロトロンビン(M380T、R431H、E509A、R596L)のネオマイシン耐性安定発現細胞株の作製を行なった。現在、野生型の培養上清サンプルをイオン交換クロマトグラフィーおよび脱塩操作にて精製中である。精製後にCBB染色を行い、リコンビナントプロトロンビンが精製されていることを確認している。 精製後の野生型リコンビナントプロトロンビンを用いて、まずは凝固時間法を用いた活性測定を行い、正常な凝固活性を有することを確認する。次に、サンプル中のリコンビナントプロトロンビンをトロンビンに活性化する活性化剤として、リン脂質・ウシ活性化第X因子(FXa)・ウシ活性化第V因子(FVa)・カルシウムイオン複合体を使用しているが、リン脂質の種類(フォスファチジルコリン・フォスファチジルセリン・フォスファチジルエタノールアミンのうち2種または3種混合)によっても反応性が異なることが判明したため、複数のリン脂質を用いて活性化条件を検討中である。また、リン脂質の条件検討と同時並行し、活性化剤中のウシFXaおよびウシFVaの至適濃度、pH、イオン強度などの条件検討を行ない、最適な活性化条件を設定する。サンプル中の野生型リコンビナントプロトロンビンを適切に活性化した上で、合成基質法による活性測定を行い、正常血漿と同程度の活性を有することを確認する。精製した野生型サンプルで活性化条件設定および正常な凝固活性が確認され次第、同様の方法で変異型サンプルの精製を行い、TAT形成能や残存トロンビン活性測定、Biacoreでのアンチトロンビンやトロンボモジュリンとの分子間相互作用の確認を行なう。
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Strategy for Future Research Activity |
精製した野生型および変異型リコンビナントプロトロンビンを用いて、各種凝固機能、TAT形成能、残存トロンビン活性測定を行い、ATRを評価する。その後、分子間相互作用装置Biacoreを用いて、アンチトロンビンおよびトロンボモジュリンを固相化して、変異型トロンビンとの結合親和性を定量評価する。Biacoreを用いた方法はアンチトロンビン、トロンボモジュリンとの直接的な結合能を評価できるため、本研究の目的であるTMRによる血栓形成機序の解明が一層進むものと思われる。 また、今回の変異型の一つであるR431は、フィブリノゲン、第V因子、トロンボモジュリンとの結合に重要な部位に位置しているため、TMRを有する可能性が高いと予測している。そこで、Biacoreの条件設定と同時並行して、別の手法を用いてTMRを検出する。まずは、変異型トロンビン-トロンボモジュリン複合体を形成させ、抗凝固因子であるプロテインC活性化能を評価する。次に、サンプルにトロンボモジュリンを添加し、一定時間経過後に、フィブリノゲンを添加して凝固時間を測定する。TMRを有している場合には、残存トロンビンが多いため、凝固時間の延長が軽度となると予測される。これらの実験によってもTMRを評価することができ、Biacoreの結果と合わせることでTMRが血栓形成にもたらす作用が明らかになるものと考える。 In vitroの実験においてTMRを示した変異型プロトロンビンノックインマウスの作製に着手し、マウス血漿中の凝固活性化マーカー(TAT、可溶性フィブリン、フィブリン/フィブリノゲン分解産物、Dダイマーなど)を測定する。さらに、マウスの血管を含む組織を採取し、血管内血栓の有無、フィブリン沈着部位・沈着量を組織標本にて評価する。これらを通して、in vivoでのTMRによる血栓形成機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、既に樹立してあったリコンビナントプロトロンビン安定発現細胞株を使用するつもりであったが、凝固系の実験でよく用いられるヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)を用いて安定発現細胞株を全て作製し直した。また、凝固時間法や合成基質法による活性測定、TAT形成能、残存トロンビン活性を測定したが、野生型でも血漿に比較して活性が低いこと、サンプルである培養上清のCBB染色にてリコンビナントプロトロンビン以外のタンパク質が検出されたことより、サンプルである培養上清を精製する必要性が生じた。野生型及び変異型全てのサンプルをイオン交換クロマトグラフィーおよび脱塩操作にて精製することとなったため、当初の研究計画より遅延している。 次年度および当該年度以降分として請求した助成金は、今後毎回の精製作業で必要となるセファロースビーズ、カラムといった精製関連備品、凝固機能測定試薬、Biacoreによる異常トロンビンとATあるいはTMとの分子間相互作用を評価するためのセンサーチップ、バイアル等の各種消耗品や精製AT・TM、マウスを用いたin vivoでのTMRによる血栓傾向の評価のためのマウス、各種試薬や抗体の購入に使用し、TMRを有する異常プロトロンビンの血栓症発症機構の解明を行う。
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Research Products
(3 results)