2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of optimal transport system of patients acute ischemic stoke and its cost-effectiveness using geographic information system
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20K23124
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
森井 康博 国立保健医療科学院, 保健医療経済評価研究センター, 研究員 (70880574)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 脳血管内治療 / アルテプラーゼ静注療法 / 地理的アクセシビリティ / 地理情報システム / 費用対効果 / 救急搬送体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞患者に対する主要な治療としてはアルテプラーゼ静注による血栓溶解療法や物理的に血栓を除去する血経皮的脳血栓回収療法があるが、治療時間の制約や血管内治療に関しては認定を受けた血管内治療専門医が行う必要があるという資源的制約から、実施率が低いことや実施率の地域格差が問題視されている。より早く脳梗塞患者にこれらの治療を提供し治療アウトカムを向上させるために,血管内治療専門医が患者により近い医療機関に出張して治療する派遣型医師出張システム、血管内治療等が可能な医療機関に直接患者を搬送するMothership法、血栓溶解療法の一次治療を行ってから血管内治療等の高度な治療が可能な医療機関に患者を搬送するDrip and Ship法など複数の搬送方法が検討されているが、最適な脳梗塞患者の搬送体系は地域によって異なると考えられる。また,都道府県等は脳梗塞患者への医療提供体制の均てん化を図っていくことが望まれるが,同時に限られた予算制約の中での施策の費用対効果の視点も重要である。そこで本研究では面積が広大で医療サービス提供の地域格差が認められる北海道を対象として,これらの搬送方法が患者の治療アクセシビリティに及ぼす効果,およびアクセシビリティ向上によってもたらされる治療効果や生じる費用について分析を行い,それぞれの搬送方法の費用対効果を地域別に推計する。アクセシビリティに関する搬送時間等の分析は地理情報システムを用いて行い,アルテプラーゼ静注による血栓溶解療法の治療効果は先行研究等の二次データや,必要に応じてメタアナリシス等を実施することにより推計する。本結果より各二次医療圏において各搬送方法によりもたらさせる費用対効果が地域ごとに算出されるため,地域別に最適な脳梗塞患者の搬送体制を検討する一助となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析を行うための環境構築として,地理情報システムのライセンスやそのパッケージなど、分析を進めるにあたって必要なソフトウェア等を購入し、研究環境の整備を行った。地理的分析を行うためのデータとして,各脳梗塞患者搬送方法に関わる医療機関や消防署の配置,人口データ等の収集がほぼ終了している。アルテプラーゼ静注療法や血管内治療を受けた患者の医療費等のコスト,および各搬送方法で生じるコストに関しての二次データの調査・収集を行い,分析について目途が立てられている。その他,費用対効果分析における質調整生存年や介護費推計に用いるデータソースに関しても調査等が終了している。 アルテプラーゼ静注や血栓溶解療法の実施によって得られる治療効果に関しては当初先行研究のメタアナリシスなどの二次データを利用して推計を行う予定であったが,先行研究のRCTのシステマティックレビューおよびメタアナリシス・ネットワークメタアナリシスなどを行うこととした。現在はシステマティックレビューを進めている段階であり,計画に多少の変更は合ったものの順調に進展していると考えられる。 本研究では地理情報システム上に仮想患者を発生させた救急搬送のシミュレーションを反復試行する。反復試行はPythonやRソフトウェアを用いて行う予定であり,シミュレーションに必要なコーディングは現在作成中であり,進展としては問題がないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルテプラーゼ静注や血栓溶解療法の実施によって得られる治療効果を推計するために,現在は先行文献のシステマティックレビューを行っている段階である。レビューの終了後はs抽出した文献を用いたメタアナリシス等による統計的統合を行っていく予定である。 地理的分析に関しては搬送シミュレーションを行うためのPythonでのコーディングを引き続き行い,搬送シミュレーションを実施する。 搬送シミュレーションから得られた結果を基に,すでに収集している二次データ等を基にそれぞれの脳梗塞患者搬送方法の治療効果,費用対効果を地域別に算出,集計する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染流行により昨年前半の研究進捗に影響があったことや,学会が現地開催とならなかく旅費が発生しなかったことが原因で多少の次年度の使用額が生じている。次年度への繰越分は2021年度における学会参加費や,分析や研究のデザイン上必要な書籍等に支出される見込みである。
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