2020 Fiscal Year Research-status Report
A survey on cases of child abuse that cause trauma using the administrative claims database
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20K23159
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩尾 友秀 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60772100)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 身体的虐待 / 虐待防止 / リアルワールドデータ / レセプト |
Outline of Annual Research Achievements |
虐待による児童の年間死亡者数は、近年では年間約50件前後で推移している。一方で、死亡には至らないものの、後遺症が残る事例や、同一児童に対して継続的に繰り返されるといった危険度の高い身体的虐待事例の実態はほとんど明らかになっていない。 そこで本研究では、平成24年度から27年度の我が国のレセプトデータを利用し、被虐待児症候群という傷病名を用いて、身体的虐待が疑われる外傷を伴う児童に関して調査した。調査の結果、脳機能障害のように後遺症が残る可能性が高い外傷を伴う事例も一定程度確認できた。今回使用したレセプトは1ヶ月診療分の1%~10%の範囲でサンプリングしたものであることと、被虐待児症候群が付与されていない被虐待児童も存在することを考慮すると、危険度の高い虐待事例は相当な数に上る可能性が高いことから、早急に児童虐待を発見・防止するしくみを検討することの重要性を示唆できたといえる。 本研究では、危険度の高い重症事例ではほとんどが医療機関で治療を受けるということに着目することで、レセプトデータを有効活用することができると考えた。そして、医療機関で治療を受けた中でも、被虐待児症候群という傷病名が付与されるのは一握りであろう。しかし、仮に、その一握りの人数でさえ想像以上に多い結果となる可能性はないだろうか。調査してみなければ分からないのである。本研究で用いたレセプトデータは、児童虐待の研究分野ではあまり用いられていない。レセプトデータの二次利用という観点からは、一見すると限定された条件でしか活用できないように見える題材を用いて、社会的課題に対して有効活用できる可能性を見出すことの重要性を示唆できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、NDBサンプリングデータを解析することで、死亡には至らないものの危険度の高い児童虐待事例が一定程度存在することを示唆した。これらの成果は、児童虐待を主に扱う学会にて公表済である。今後は、これらの成果をまとめることで論文誌としてまとめる段階まで進めている。そのため、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
NDBサンプリングデータを解析することで、さらに詳細な調査を実施する予定である。児童虐待という研究分野においては、レセプトを用いた研究も危険度の高い虐待事例に着目している事例は極めて少なく、研究分野として周囲の賛同を得にくいといえる。そのため、今後は少しずつ裾野を広げていく活動も研究の一環として重要であると考えている。これらの調査によって得られた成果は、国内外の論文誌に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、国内出張が禁止されたため、旅費に関して割り当てることができなかった。次年度の学会発表や論文誌出版費用に割り当てることで、有効に助成金を活用する予定である。
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