2021 Fiscal Year Research-status Report
New Physical Picture of Plasma Heating Revealed by Advanced Large Solar Telescope DKIST
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20KK0072
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
鳥海 森 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 国際トップヤングフェロー (30738290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 雅仁 国立天文台, SOLAR-Cプロジェクト, 助教 (80425777)
横山 央明 京都大学, 理学研究科, 教授 (00311184)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Keywords | 超大型太陽望遠鏡DKIST / 太陽観測衛星ひので / 光球・彩層磁場 / 輻射磁気流体シミュレーション / 偏光分光観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の初年度である2020年度には、DKIST初期観測フェーズ第1期(OCP1)の観測提案が募集され、本研究チームからも複数の課題が採択された。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響から観測装置の整備に遅延が生じ、2021年度には採択課題の観測実施は無かった。今後、2022年4月以降にOCP1の観測が行われる見込みがあり、実施されれば、現地望遠鏡サイトへ赴いて「ひので」衛星等との協調観測を指揮する。また、2022年度にはOCP2募集が想定され、そこへ向けた準備活動も実施する。本課題に関連して、太陽彩層の波動加熱に関する観測研究を実施する(Anan et al. 2021)とともに、太陽・恒星の大気加熱メカニズムが共通であることを観測的に解明した(Toriumi & Airapetian 2022)。 本研究課題のもう一つの目標である、輻射磁気流体シミュレーションを用いたモデル大気疑似観測については、理論班を中心に次の成果が得られた。まず、彩層を模したシミュレーションにより、大気中の衝撃波が彩層加熱に十分な寄与を持つことを示した(Wang et al. 2021)。また、同様の彩層磁気リコネクション計算についてDKISTで用いる近赤外線スペクトルで疑似観測を行い、ジェット噴出や衝撃波に伴う磁場構造の変化を偏光信号として検出する方策を提案した(Zhou・東京大学2021年度修士論文)。さらに、磁気対流計算の結果をもとに、機械学習により、観測の困難な小スケールの速度場構造を推定する手法を開発した(石川・総研大2021年度博士論文・Ishikawa et al. 2022)。 研究解析環境の整備として、研究分担者(久保)が2021年度予算で計算機を導入し、当初計画に沿った整備が行われた。これらは観測データやシミュレーションデータの解析に利用される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究チームでは2020年度にDKIST初期科学観測提案を行い、複数の課題が採択済みである。特に、勝川・石川の提案は優先度が最も高いカテゴリに採択されているが、COVID-19により2021年度には観測実施が行われなかった。一方、本研究課題で解明を狙うプラズマ加熱に関連して、阿南が彩層加熱における磁気流体波の寄与を観測的に検証(Anan et al. 2021)し、鳥海が太陽・恒星において大気加熱メカニズムが両者で共通であることをデータ解析から示した(Toriumi & Airapetian 2022:アメリカン大学・宇宙研プレスリリース)。 また、輻射磁気流体シミュレーションを用いたモデル大気疑似観測についても大きな成果が得られた。Wangは飯島の開発した2次元輻射磁気流体コードにより、大気中の衝撃波が彩層加熱に十分な寄与を示すことを明らかにした(Wang et al. 2021)。Zhouの東京大学2021年度修士論文では、彩層磁気リコネクション・ジェット噴出を再現計算し、DKISTで用いられるカルシウム近赤外線で疑似観測を行った。これにより、彩層ジェットや衝撃波に伴う磁場構造の変化をカルシウム線の偏光シグナルとして検出する方策を提案した(Zhou, Yokoyama, et al.として論文投稿準備中)。また、石川の総研大2021年度博士論文では、磁気対流シミュレーションの結果に基づいて、観測的に測定が困難である小スケールの速度場を機械学習により導出する手法を開発した(Ishikawa et al. 2022:国立天文台・核融合研・総研大プレスリリース)。さらに査読論文を投稿準備中である。 COVID-19の状況により観測面では依然として厳しい状況が続くが、観測・理論とも大きな成果が得られており、進捗状況を「(2)概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、DKIST初期科学運用(OCP1)が引き続いて行われる見込みである。我々の研究チームでは複数の課題が初期科学観測に採択されており、2022年度に観測が実施されることを見込み、そこへ向けた活動を実施する。新型コロナウイルス感染症の状況により依然としてDKIST観測装置の整備や初期科学観測の実施に遅延が生じる可能性は残るが、実際に観測が実施され、海外渡航が可能であれば、光球からコロナへ至るエネルギー輸送の一貫した解明を図るため、現地望遠鏡サイトへ赴いて「ひので」衛星・IRIS衛星を用いた同時・同一ターゲットの観測を指揮する。また、第二期の初期科学観測提案(OCP2)が募集される可能性があり、そこへ向けた準備活動も行う。 一方、輻射磁気流体シミュレーションの疑似観測については、既に複数の成果が得られている。そこで、2022年度は研究代表者(鳥海)・研究分担者(久保・横山)の取りまとめのもと、DKIST側共同研究者(Uitenbroekほか)と会合を開き、計算結果の妥当性や疑似観測用計算コードの詳細などを議論する。同時に、モデル大気計算の推進も行う。そのために、国立天文台天体シミュレーションプロジェクトや東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを活用し、全体として計画に遅れが生じないよう対策する。 2020年度、2021年度に実施した計算機環境の整備に引き続き、2022年度は研究代表者(鳥海・JAXA宇宙研)がメモリの増強を、研究分担者(横山・京都大学)が計算機を導入する。また、各拠点機関においてデータストレージ(ハードディスク)の購入を行い、研究環境の整備を着実に進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、DKIST観測やシミュレーション研究に伴う相手方との研究打ち合わせ・共同研究がオンサイトで実施できず、海外渡航旅費として使用されなかった。また、京都大学では計算機導入が2021年度に実施できなかった。以上の理由から、研究代表者(鳥海)に1,241,472円の、研究分担者(久保)に1,008,020円の、研究分担者(横山)に1,434,206円の次年度使用額が生じた。2021年度はこれまで実施できなかった共同研究のための海外渡航費、研究環境整備のための計算機・メモリ・データストレージ(ハードディスク)購入費、成果公表のための学会参加費・論文出版費などに充当する計画である。
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Remarks |
(1),(2)はToriumi & Airapetian (2022)に関するプレスリリース、(3),(4),(5)はIshikawa et al. (2022)に関するプレスリリース
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Research Products
(34 results)