2023 Fiscal Year Research-status Report
Does No-till farming enhance carbon sequestration in Humid Asia?
Project/Area Number |
20KK0149
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
小崎 隆 愛知大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (00144345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 智恵 宇都宮大学, 農学部, 助教 (10725526)
藤井 一至 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60594265)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | 土壌炭素貯留 / 不耕起農法 / 湿潤アジア / 火山灰土壌 / 水田土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動を緩和し肥沃度を高める土壌管理としての不耕起栽培法の有効性を検証するため、インドネシア、米国における土壌調査を実施した。インドネシアでは、ムラワルマン大学のSukartiningsih教授とともに不耕起栽培を含む異なる土地利用条件における植物リターの分解試験の結果を取りまとめ、国際共著論文として投稿した(査読中)。米国では、オレゴン州立大学のStephen Machado教授の案内のもと長期連用圃場を視察し、半乾燥地における不耕起栽培の炭素貯留効果が有効となる一方で、被覆植物の蒸散によって土壌水分が失われるトレードオフが働く地域が存在するという情報提供を受け、日本・インドネシアの事例との違いを明確化した。不耕起栽培の炭素貯留効果について世界中の報告値にばらつきがあることから、世界210報の論文データを収集・メタ解析を行い、国際共著論文の執筆を完了した。この中で、安定同位体比を用いてC3/C4植物由来有機物の分解速度と蓄積速度を分離し、分解速度・炭素蓄積速度それぞれの規定要因を解明することに成功した。この結果、不耕起栽培の炭素貯留効果が特に熱帯地域で有効となることを解明した。これは地域によって不耕起栽培の炭素貯留効果が異なることを示す重要な成果である。 これらの研究成果は、国際砂質土壌会議(2023/6/4-8)で4件の口頭発表及び「Sandy Soils」(Springer社、2023/11)の一部として公表された。また、国際NGOソリダリダードの国際セミナー「土壌の特質と持続可能な土壌管理のあり方:アブラヤシ栽培地を事例に」(2023/12/7)、BS日テレ『深層News』(2023/10/3)、「日伊フォーラム」(2024/1/19)など一般向けの研究成果の発信・普及も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通り、本プロジェクトの成果を米国の国際砂質土壌会議で4件の口頭発表を行い、さらにインドネシア、米国の研究者とともにそれぞれ国際共著論文の執筆・投稿の段階まで進めることができた。加えて、国際NGOソリダリダードの依頼を受け、アブラヤシ栽培地の持続的な土壌管理に向けた国際セミナーを実施し、また、日伊経済連合会の招待を受け、両国の企業代表者を対象として実施されている「日伊フォーラム」で講演を行うなど、我が国のみならずマレーシア、インドネシア、イタリアの企業、NGOに対して不耕起栽培を含む持続的な土壌管理を指導・普及し、その重要性を周知させることができた点から想定以上の成果であると。
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Strategy for Future Research Activity |
水田土壌の炭素動態モデル改良に向けて、水田の土壌有機物の代謝回転速度に関する実験を日本・インドネシア(ムラワルマン大学、ボゴール農科大学)の共同研究として進める。すでに土壌採取、分析の大部分を終了しており、成果の取りまとめを加速する。研究成果は、イタリアで開催されるIUSS100周年記念大会(IUSS Centennial)および日本で開催される第9回土壌鉱物・有機物・微生物の相互作用に関する国際シンポジウム(ISMOM2024)において発表するとともに、インドネシア・米国の共同研究者と連携し、植物リターの分解速度、不耕起栽培の炭素貯留効果に関する論文の公表を行う。 また、本課題研究の今後のさらなる展開を目指して、現在の米国、インドネシアとの連携に加えて、欧州最大の水田農業の実績を有するイタリアとの連携を強化すべく、上記のイタリアにおける国際会議時に同国を代表する研究機関(トリノ大学、国立稲研究所、国立農業研究機構他)の視察ならびに研究者との議論を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の当初計画は研究代表者ならびに分担者計3名により米国ならびにイタリアにおける現地調査であった。米国については計画通り実施されたが、イタリアについては、受け入れ機関の状況から判断した結果、事前調査が必要であることが判明した。ついては、今年度は研究代表者1名のみにより当該調査を実施したことにより残額が生じた。このような事情に基づき、本残額を使用して、次年度は3名全員によるイタリアの本調査を実施(5月中旬予定)する計画である。
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