2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21220005
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
定藤 規弘 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (00273003)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50211735)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギ医学研究センター, 教授 (50360813)
小枝 達也 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70225390)
飯高 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324366)
小坂 浩隆 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命准教授 (70401966)
|
Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
Keywords | 機能的MRI / 向社会行動 / 文化間差異 / 共感 / 心の理論 / 自閉症スペクトラム / コホート調査 / 報酬系 |
Research Abstract |
「向社会行動は、自他相同性を出発点として発達し、広義の心の理論を中心とした認知的社会能力を基盤として、共感による情動変化ならびに、社会的報酬により誘導される。」との仮説を、機能的MRIを中心に、発達過程の行動解析、病理群との比較、ならびに文化間差異の検出を用いて証明することを目的として研究を進め、以下の所見を得た。 (1)乳児における他者行為の知覚と自身の運動発達の程度に強い関係があるという観察によって自他相同性の重要性を明らかにし、成人fMRI実験によりその神経基盤描出に成功した。これによって他者の行為を理解するためには、観察した他者の行為を自己の運動表象に写像する必要があるという直接照合仮説を証明した。(2)発達心理学から相互模倣についての仮説が提出され、それを機能的MRIで証明し、疾患群に適用してASDの病態生理理解を一歩進めた。(3)乳幼児で定量解析していた共同注意の神経基盤を調べるために2個体同時計測MRIシステムを開発し、正常群での計測を経て疾患群へ適用した。(4)神経活動との対応がとれた視線定量解析法の開発を進めた。(5)自己認知と自己意識情動の発達心理学的考察から機能的MRI実験が組まれ、疾患群への適用へとつながるとともに、自己解釈スタイルの文化差検討へ進んだ。(6)向社会行動の一因としての社会報酬(褒め)の効用として、動機づけが強調されてきたが、学習過程そのものに対する効果が確認され、今後学習への適用等を含めた研究の新進展が期待された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究分担者間の相乗作用が強く働き、チームとしての生産性が非常に高まっているため。例えば、 (1) 乳児における他者行為の知覚と自身の運動発達の程度に強い関係があるという観察によって自他相同性の重要性を明らかにする(板倉)とともに、成人fMRI実験によりその神経基盤描出に成功した(定藤)。これは、他者の行為を理解するためには、観察した他者の行為を自己の運動表象に写像する必要があるという直接照合仮説を証明したものである。(2) 発達心理学から相互模倣についての仮説が提出され(板倉)それを機能的fMRIで証明し(定藤)、さらに疾患群に適用することによってASDの病態生理理解へ一歩進めた(小坂)。(3) 板倉が乳幼児で定量解析していた共同注意の神経基盤を調べるために2個体同時計測MRIシステムを開発し(定藤・小坂・岡沢)正常群での計測を経て、疾患群へ適用した。これらを元に、神経活動との対応がとれた視線定量解析法の開発(定藤)が進みつつある。(4) 自己認知と自己意識情動の発達心理学的考察(板倉)から機能的MRI実験が組まれ(定藤)、疾患群への適用(小坂・岡沢)へとつながるとともに、自己解釈スタイルの文化差検討へ進んでいる(飯高)。(5) 発達障害の鑑別診断法として開発された皮肉文テスト(小枝)の神経基盤を成人において明らかにし(定藤)、それを学童へ適用しつつある(小枝)。 (6) ASDや小児うつ病を含む精神疾患の診断を目的として、ノルエピネフリン神経系の異常を描出するPET用分子プローブの開発がすすみつつある(岡沢)。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)板倉は、平成23年度に6歳になった参加児の感情理解、心の理論尺度課題、言語発達検査の収集を終え、鋭意分析中である。参加児は、5ヶ月時点から継続してデータを収集しており、極めて貴重なデータとなる。初期の社会的知覚・認知と、後の感情理解や心の理論といった高次の社会的認知の関係が明らかになりつつあることから、上記のような仮説検証型研究が更に加速することが期待される。(2) 小坂は、ASDの診断・治療(含むoxytocin)・経過観察に注力しており、それらに資するために、本研究で開発された脳機能計測を適用することが出来る。一方で社会能力の障害とそれに対する治療効果から、社会能力の獲得過程の理解が深まることが期待される。(3)2個体同時計測MRIシステムが生理研に導入され、既述した先行研究を元に、共同注意と相互注視に関連する課題を詳細に追求しており、社会能力の基礎である2個体間相互作用(間主観性)の神経基盤が明らかになることが期待される。(4)向社会行動の大きな動因であると想定されている「共感」に基づく向社会行動の機能的MRI実験が進行中であり、その神経基盤が明らかになることが期待される。(5)向社会行動の一因としての社会報酬(褒め)の効用として、動機づけが強調されてきたが、学習過程そのものに対する効果が確認され、今後学習への適用等を含めた研究の新進展が期待される。
|
Research Products
(15 results)