2011 Fiscal Year Annual Research Report
氷床コアの総合解析による様々な時間スケールの地球環境変動の解明
Project/Area Number |
21221002
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
本山 秀明 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (20210099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 久美子 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80202620)
飯塚 芳徳 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (40370043)
植村 立 琉球大学, 理学部, 助教 (00580143)
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Keywords | 環境変動 / 氷床コア / 氷期-間氷期 / エアロゾル / ダスト / 年代決定 / 時間スケール / 気温変動 |
Research Abstract |
・ドームふじ氷床コアの分析を継続した。 ・氷床コア含有気体の窒素と酸素の量比の2000年間隔の深部データが完成したので、これを用いてミランコビッチ・サイクルに基づく新たな年代決定を行っている。 ・ドームふじ深層コアの海塩性ナトリウムイオン(海塩エアロゾルの指標)、非海塩性カルシウムイオン(ダストの指標)、非海塩性硫酸イオン(海洋生物活動の指標)のフラックス変動の復元を行った。非海塩性硫酸イオンは、オービタルスケールの変動を示すものの、海塩性ナトリウムや非海塩性カルシウムとは異なり、気温と単純な逆相関の関係を示していなかった。氷期の寒冷期に、陸域のダスト起源の非海塩性硫酸イオンが増えた可能性が示唆された。 ・氷床コアから気温変動復元を高精度化するために、同位体モデルを用いた気温復元を行った。過去の研究結果とは異なり、水蒸気起源水温変動が有意に大きい推定値を得た。 ・氷期・間氷期サイクルとエアロゾル変動の対応に着目して、エアロゾルの濃度だけでなく組成という新しい古環境プロキシーに着目した解析をした。イオン濃度から硫酸塩濃度を復元し、その濃度が氷期間氷期スケールの気温変動と負の相関関係があることを明らかにした。この負の相関は硫酸塩が負の放射強制力として氷期間氷期スケールの気温変動に作用していることを示唆する。 ・極域雪氷試料のストロンチウムとネオジウムの同位体比の測定を元素の単離法の検討と磁場型多重検出型ICP-MSで可能にした。さらに四重極型(Q)ICP-MSの最適化により、元素濃度測定のサブpgオーダーの分析を可能にした。氷床表面の積雪試料の分析から、大陸起源粒子状物質の起源や希土類元素存在度パターンに関する情報が得られた。 ・トラジェクトリモデル及び客観解析気象データを用いた南極氷床への大気輸送起源の分布を、現在気候場における年平均および季節変化に着目し、沿岸域と内陸部での大気輸送の違いや各コア掘削点での特徴を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つは、ドームふじ氷床コアの解析から正確な年代軸を持う地球環境変動を明らかにし、地球環境史研究の基準となる気候・環境変動記録を提供することである。氷床コアの分析については、分析装置の動作不良等により、計画どおりには進んでいないが、今度の努力により予定どおりの成果が見込まれる。また過去72万年間の気候・環境変動を論じた論文発表が平成24年度前半には出版できる見通しである。これに続く論文発表がすでに複数準備されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況は、測定機器の故障などがあり、年次計画よりも遅れ気味であるが、大きな問題点は生じていない。研究目的の一つである氷床コアの年代を高精度に決定し、過去72万年間の地球規模気候・環境変動の基準を作成する。大規模な地球環境変動について、時間スケールに特徴つけて研究を進める。また、当初の研究計画では強調していなかったが、気候・環境要素が積雪に取り込まれて氷床に保存される過程や現在の物質循環に関しても研究を進める。これらは、氷床コアから得られた分析データをから過去の気候・環境変動復元に関して不可欠な研究である。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] The rates of sea salt sulfatization in the atmosphere and surface snow of inland Antarctica2012
Author(s)
Iizuka, Y., A.Tsuchimoto, Y.Hoshina, T.Sakurai, M.Hansson, T.Karlin, K.Fujita, F.Nakazawa, H.Motoyama, S.Fujita
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Journal Title
J.Geophys.Res.
Volume: 117
Pages: D04308
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Formation and metamorphism of stratified firn at sites located under spatial variations of accumulation rate and wind speed on the East Antarctic ice divide near Dome Fuji2012
Author(s)
Fujita, S., Enomoto, H., Fukui, K., Iizuka, Y., Motoyama, H., Nakazawa, F., Sugiyama, S., Surdyk, S.
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Journal Title
The Cryosphere Discuss
Volume: 6
Pages: 1205-1267
DOI
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[Journal Article] A comparison of the present and last interglacial periods in six Antarctic ice cores2011
Author(s)
V.Masson-Delmotte, D.Buiron, A.Ekaykin, M.Frezzotti, H.Gall'ee, J.Jouzel, G.Krinner, A.Landais, H.Motoyama, H.Oerter, K.Pol, D.Pollard, C.Ritz, E.Schlosser, L.C.Sime, H.Sodemann, B.Stenni, R.Uemura, F.Vimeux
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Journal Title
Clin.Past
Volume: 7
Pages: 1-27
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Spatial and temporal variability of snow accumulation in Dronning Maud Land, East Antarctica, including two deep ice coring sites at Dome Fuji and EPICA DML2011
Author(s)
S.Fujita, P.Holmlund, I.Andersson, I.Brown, H.Enomoto, Y.Fujii, K.Fujita, K.Fukui, T.Furukawa, M.Hansson, K.Hara, Y.Hoshina, M.Igarashi, Y.Iizuka, S.Imura, S.Ingvander, T.Karlin, H.Motoyama, F.Nakazawa, H.Oerter, L.E.Sjoberg, S.Sugiyama, S.Surdyk, J.Strom, R.Uemura, F.Wilhelms
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Journal Title
The Cryosphere
Volume: 5
Pages: 1057-1081
Peer Reviewed
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[Presentation] 南極ドームふじ氷床コアにおける過去72万年の酸素・水素安定同位体比の変動2011
Author(s)
植村立, 本山秀明, Masson-Delmotte, V., Jouzel, J., 三宅隆之, 平林幹啓, 倉元隆之, 河野美香, 東久美子, 藤井理行, 藤田耕史, 堀川信一郎, 五十嵐誠, 飯塚芳徳, 鈴木啓助, 鈴木利孝
Organizer
第2回極域科学シンポジウム
Place of Presentation
国立極地研究所、立川市
Year and Date
20111114-20111118
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[Presentation] 南極ドームふじ氷床コアによる過去72万年の氷期サイクルスケールのダストフラックス変動2011
Author(s)
三宅隆之, 藤井理行, 平林幹啓, 倉元隆之, 東久美子, 本山秀明, 藤田耕史, 堀川信一郎, 飯塚芳徳, 五十嵐誠, 河野美香, 鈴木啓助, 鈴木利孝
Organizer
第2回極域科学シンポジウム
Place of Presentation
国立極地研究所、立川市
Year and Date
20111114-20111118
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[Presentation] Characteristics of correlation between climate and environmental elements from past 720,000 years in Dome Fuji ice core, Antarctica2011
Author(s)
Motoyama, H., Goto-Azuma.K., Hirabayashi, M., Miyake, T., Uemura, R., Kuramoto, T., Igarashi, M., Iizuka, Y., Suzuki, K., Suzuki, T., Fujita, K., Horikawa, S., Kohno, M., Fujii, Y., Kawamura, K.
Organizer
WCRP Open Science Conference
Place of Presentation
Denver, Colorado, USA
Year and Date
20111024-20111028
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