2012 Fiscal Year Annual Research Report
GPS海洋ブイを用いた革新的海洋・海底総合防災観測システムの開発
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21221007
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
寺田 幸博 高知工業高等専門学校, 環境都市デザイン工学科, 教授 (30442479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 照之 東京大学, 地震研究所, 教授 (80134633)
越村 俊一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50360847)
川口 浩二 独立行政法人港湾空港技術研究所, 海洋情報研究領域, 海象情報研究チームリーダ (50371753)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | GPS津波計 / GPS波浪計 / 津波計測 / 衛星通信 / 東北地方太平洋沖地震津波 / RTK測位法 / PVD測位法 / PPP-AR測位法 |
Research Abstract |
本研究は,二つのステージで研究を進めてきた.第1ステージは,室戸岬沖に保有しているGPS津波計による継続的観測とそれを用いた要素技術開発である.第2ステージでは,開発した要素技術を組み込んで,さらに沖合のブイで観測システムを構築し,その有効性を実証することである. 平成23年度で第1ステージは完了した.まず,室戸岬沖で継続的に観測を続け 2011年の東北地方太平洋沖地震津波等の正確な津波情報を発信できた.また,超精密単独測位法のPPP-AR及びPVD法を沖合展開の距離制限から解放される観測システムとして適用できる目処をつけた.また,RTK法についても,対流圏の補正方法を改良したRTNet法及び RTKLIB法を室戸岬沖のGPS津波計実験機のデータを用いて測位の安定性の検討を行い, 沖合100kmでの稼働が可能であることを示した. 平成24年度からスタートした第2ステージでは,これまでの要素技術開発の結果を統合して,より沖合で機能するGPS津波計システムを構築した.具体的には,室戸岬沖35kmの高知県の黒潮牧場ブイ及び標高270mの国立室戸青少年自然の家の屋上を借り受け,GPS津波計・波浪計・潮位計としての必要機器設置し,データをすべて高知高専に送り,Web公開と100km長距離基線測位法などの検討が行えるシステムを構築した.これまでの約1年間,http://www.tsunamigps.com で観測データを公開している.津波の情報に加えて台風時の高波・高潮がリアルタイムにモニタできることから,室戸市の防災情報として活用され,実験に協力している地域住民の安全・安心の実現にも一役買っている.加えて,東日本大震災で浮かび上がったデータ伝送の継続性の課題に対して,JAXA及びNICTなどと連携して,技術試験衛星VIII型で被害が無い地域に送る実験を行い,その有効性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度末において,さらなる沖合展開に必要とする要素技術に目処を付け,室戸岬沖35kmに設置されている高知県水産振興課の黒潮牧場16号ブイを借り受け,ブイ上にGPS受信機,無線機,太陽電池などを搭載して,GPS津波計・波浪計・潮位計として機能させている.これまでの約1年間,http://www.tsunamigps.com で観測データを公開している.また,要素技術として開発した種々の測位法やシステムの改良に取り組み,GPS津波計の設置において沿岸からの距離に制限が無い精密単独測位法もシステムに組み込み,そのデータを沖潮位偏差(津波)データとして同ホームページでデータ公開している.これらによって,100km以上の沖合展開を目指した当初の計画を達成している また,中間評価時点で実施要請のあったブイ上で計算した測位データを通信衛星を用いて陸上に伝送する実験についても,JAXAとNICTの協力を得て実行に移し,良好な結果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
室戸岬沖の黒潮牧場16号浮魚礁ブイ(高知県水産振興課から一部借用)にGPS受信機,音響システム及び無線機を積み込み,沖合GPS波浪計・津波計・潮位計として機能させているGPS津波計を継続的に運用することによって得られるデータを用いて,次の要素技術開発を行う. ①改良したRTK-GPS測位法(RTNet)の長基線測位の安定性実証:これまで20kmの沖合展開が限界とされてきたRTK法に対して、基線長35kmで1年間,安定的に稼働させてきた.基線長80kmの場合についても稼働させる.②超精密単独測位法(PPP-AR)の洋上使用:計算システムの省電力をはかり,ブイ上で計算を行ってデータ電送負担の小さい出力を得る装置を試作して実験に供する.観測結果はJAXA,NICTの協力の下,衛星通信を試みる.③超精密単独変異計測法(PVD)の高機能化:本計測法は,秒単位で変化する波浪の計測では計測精度が高く,超精密単独測位法とのハイブリッド的利用を行う.④オープンソースRTK-GPS測位法(RTKLIB)のチューニング:GPS津波計の利用のカスタマイズを行い,オープンソースの利用価値を高め,より多くの期間でGPS津波計の活用ができることを目指す.⑤地殻変動連続観測システムの調整・稼動:GPS津波計の日常的活用を目指す.⑥津波早期警報の向上に向けた沖合観測情報の発信とシミュレーションの高度化:沖合観測情報を津波早期警報の向上に向けて有効活用するための研究開発を継続して実施する.⑦東北地方太平洋沖地震津波に対する国交省GPS波浪計観測データ解析による津波予測方式の高度化:大震災発生時にリアルタイムで公開されたデータ及び基準局のバックアップ電源の下で保存されていた完全な津波波形を精査し,津波の予測と観測のあり方について取りまとめる.
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