大規模自然災害時の史料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築

2009 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21222002
• Research Institution: Kobe University
• Principal Investigator: 奥村 弘 Kobe University, 人文学研究科, 教授 (60185551)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 市澤 哲 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30251862) ; 平川 新 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90142900) ; 矢田 俊文 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40200521) ; 足立 裕司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60116184) ; 今津 勝紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (20269971)
• Keywords: 史料研究 / 地域歴史資料学 / 被災歴史資料保全論 / 被災歴史資料修復論 / 震災資料 / 水損史料

Research Abstract

本研究は、地震・大規模風水害の続発によって地域歴史資料の保全をめぐる問題が集約的に問われることになった被災各地を中心として、歴史資料の現状把握および各地で生まれた歴史資料保全論の比較検討を基盤とし、地域歴史を次世代に引き継ぎ、地域住民の歴史認識を豊かにしうる地域歴史資料学の構築をめざすものである。平成21年度の主な研究成果としては、以下のとおりである。
1.被災各地の歴史資料保全論:2009年8月に発生した台風9号で大きな被害をうけた兵庫県佐用町・宍粟市で、資料のレスキュー・応急処置などの対応のため、のべ13回の現地入りを行った。2010年1月30日～31日には「被災地フォーラムin神戸」を開催し、被災各地の資料保存活動について比較検討を行う研究会と、「震災から15年-地域歴史資料の現在」と題したシンポジウムを行った。後者では4本の報告と4名のコメントを得て、阪神・淡路大震災以降の15年間における資料保全論・地域歴史資料学の成果と課題を議論した。2.歴史資料学による検討:2009年11月13日に「ケルン市歴史文書館研究会」を開催した。地下鉄工事の影響で3月に倒壊したケルン市歴史資料館における、その後の歴史資料保全活動と日本での支援の広がりについての報告から、歴史資料の保全と市民社会の関係などについて日独の比較検討が行われた。また、2010年2月23日には「地域歴史資料学の構築をめざして」と題した研究会を開催し、2本の報告と1本のコメントを得た。3.文化財保存科学による被災史料保存の新技術:2010年2月2日に「水損史料の保全・修復に関する研究会」を開催、2本の報告を得、水損史料の固着機構の解明についての議論がかわされた。また、山形・東京(2回)・大阪・岡山・兵庫県佐用で水損資料の修復に関するワークショップを行った。

Research Products

• [Journal Article] 時代を継承し、共鳴し合う小林聖心女子学院校舎群 (2010)
  • Author(s): 足立裕司
  • Journal Title: 建築人 549 Pages: 32-34
• [Journal Article] 歴史資料ネットワークの15年-被災歴史資料保全の「歴史」を考える (2010)
  • Author(s): 奥村弘
  • Journal Title: 災害と資料 4 Pages: 1-7
• [Journal Article] 風水害による水損歴史資料の保全活動 (2010)
  • Author(s): 松下正和
  • Journal Title: 災害と資料 4 Pages: 8-23
• [Journal Article] 1828年三条地震による被害分布と震源域の再検討 (2010)
  • Author(s): 矢田俊文
  • Journal Title: 資料学研究 7 Pages: 1-14
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] 1828年三条地震における与板町の被害 (2010)
  • Author(s): 矢田俊文
  • Journal Title: 災害と資料 4 Pages: 119-127
• [Journal Article] 新潟歴史資料救済ネットワークの5年間の取り組み (2010)
  • Author(s): 矢田俊文
  • Journal Title: 災害と資料 4 Pages: 87-108
• [Journal Article] 『播磨国風土記』揖保郡少宅里条をめぐって (2010)
  • Author(s): 今津勝紀
  • Journal Title: いひほ研究 2 Pages: 4-11
• [Journal Article] スペインの対日戦略と家康・政宗の外交 (2010)
  • Author(s): 平川新
  • Journal Title: 国史談話会雑誌 50 Pages: 9-11
• [Journal Article] (2010)
  • Author(s): 矢田俊文
  • Journal Title: 近代岩船郡と平林村木村家文書(新潟大学附置地域文化連携センター) Pages: 76-78, 78-80, 82-83
• [Journal Article] (2010)
  • Author(s): 今津勝紀
  • Journal Title: 「既多寺大智度論と針間国造」『律令国家史論集』(塙書房) Pages: 473-495
• [Journal Article] (2010)
  • Author(s): 平川新
  • Journal Title: 「歴史資料の保全と古民家」『歴史的建築リストの可能性』(日本建築学会建築歴史・意匠委員会研究協議会) Pages: 9-11
• [Journal Article] (2010)
  • Author(s): 平川新
  • Journal Title: 「前近代の国家と外交-国家の役割を考える-」『近世史サマーフォーラム2009の記録』(近世史サマーフォーラム2009実行委員会) Pages: 1-29
• [Journal Article] 地域資料館の意義と役割-山南歴史資料館を例に (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Journal Title: 歴史と神戸 275 Pages: 10-20
• [Journal Article] 地域歴史文化における大学の役割 (2009)
  • Author(s): 奥村弘
  • Journal Title: LINK 1 Pages: 45-63
• [Journal Article] 原始・古代の家族構成について (2009)
  • Author(s): 今津勝紀
  • Journal Title: 歴史と地理 225 Pages: 24-27
• [Journal Article] 歴史と地層記録から確認された1707年宝永地震による遠州灘沿岸の隆起 (2009)
  • Author(s): 藤原治
  • Journal Title: 月刊地球 31-4 Pages: 203-210
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Journal Title: 「災害と歴史資料保全」『歴史資料の保存と地方史研究』(岩田書院) Pages: 77-90
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 河野未央
  • Journal Title: 「阪神・淡路大震災から関西地区水害対応まで-歴史資料ネットワークの修復活動紹介」『罹災文化財救済処置技術意見交換会報告書』(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター) Pages: 10-17, 88-94
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Journal Title: 「被害状況の確認方法」『罹災文化財救済処置技術意見交換会報告書』(東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター) Pages: 88-94, 114-115
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 矢田俊文
  • Journal Title: 「文化財・歴史資料の救出」『地震災害への備えを考える-中越地震・中越沖地震で学んだこと』(新潟日報事業社) Pages: 38-42
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 今津勝紀
  • Journal Title: 「葛城襲津彦-五世紀前半の北東アジア史断章」『古代の人物-日出づる国の誕生』(清文堂出版) Pages: 13-32
• [Journal Article] (2009)
  • Author(s): 足立裕司
  • Journal Title: 「解題:武田五一の住宅作品と『住宅建築要義』」『住宅建築文献集成』(柏書房) Pages: 797-830
• [Presentation] 災害文化の継承に向けて (2010)
  • Author(s): 松下正和
  • Organizer: 大阪歴科協3月例会「大規模災害時における歴史資料保全活動-2009年台風9号豪雨災害における歴史資料ネットワークの活動」
  • Place of Presentation: 大阪市旭区民センター(大阪府)
  • Year and Date: 2010-03-14
• [Presentation] 歴史資料ネットワークの構築と活動 (2010)
  • Author(s): 奥村弘
  • Organizer: 千葉県美術館・博物館等職員研修会
  • Place of Presentation: 千葉県立中央博物館講堂(千葉県)
  • Year and Date: 2010-02-07
• [Presentation] 阪神・淡路大震災と地域文献資料のその後 (2010)
  • Author(s): 坂江渉
  • Organizer: 第8回 歴史文化をめぐる地域連携協議会
  • Place of Presentation: 神戸大学瀧川記念学術交流会館(兵庫県)
  • Year and Date: 2010-01-31
• [Presentation] 阪神・淡路大震災よりスタートした被災資料保全活動のその後 (2010)
  • Author(s): 松下正和
  • Organizer: 第8回 歴史文化をめぐる地域連携協議会
  • Place of Presentation: 神戸大学瀧川記念学術交流会館(兵庫県)
  • Year and Date: 2010-01-31
• [Presentation] 震災資料の15年 (2010)
  • Author(s): 佐々木和子
  • Organizer: 第8回 歴史文化をめぐる地域連携協議会
  • Place of Presentation: 神戸大学瀧川記念学術交流会館(兵庫県)
  • Year and Date: 2010-01-31
• [Presentation] 歴史文化遺産の危機管理 (2009)
  • Author(s): 平川新
  • Organizer: 一関地方社会教育協議会文化振興部会研修会
  • Place of Presentation: 一関市川崎公民館(岩手県)
  • Year and Date: 2009-12-09
• [Presentation] 歴史資料ネットワークの15年-被災歴史資料保全の「歴史」を考える (2009)
  • Author(s): 奥村弘
  • Organizer: シンポジウム「文化財・歴史資料の保全-災害時の取り組み・日常時の取り組み～2004年水害・地震から5年」
  • Place of Presentation: 新潟大学五十嵐キャンパス総合教育研究棟D棟大会議室(新潟県)
  • Year and Date: 2009-12-05
• [Presentation] 風水害による水損歴史資料の保全活動 (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Organizer: シンポジウム「文化財・歴史資料の保全-災害時の取り組み・日常時の取り組み～2004年水害・地震から5年」
  • Place of Presentation: 新潟大学五十嵐キャンパス総合教育研究棟D棟大会議室(新潟県)
  • Year and Date: 2009-12-05
• [Presentation] 神戸大学における文化財救出・防災体制研究-ボランティア団体「歴史資料ネットワーク」と連携して (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Organizer: 建築学会シンポジウム「文化遺産を災害から守る2009-2」
  • Place of Presentation: 大阪科学技術センター(大阪府)
  • Year and Date: 2009-11-27
• [Presentation] 災害時における歴史的環境保全体制の課題-自治体アンケート調査の分析を通じて (2009)
  • Author(s): 足立裕司
  • Organizer: 日本建築学会歴史・意匠委員会文化遺産災害対策小委員会
  • Place of Presentation: 建築学会会議室(東京都)
  • Year and Date: 2009-11-11
• [Presentation] 風水害からの歴史資料救出と保全-史料の『救命士』を目指して (2009)
  • Author(s): 河野未央
  • Organizer: JHK情報保存研究会「資料保存を実践する-事例から学ぶ現場の知恵」
  • Place of Presentation: 江戸東京博物館(東京都)
  • Year and Date: 2009-10-16
• [Presentation] 浜名湖西岸の浜名川流路跡で見られる1498年明応地震に伴う環境変化 (2009)
  • Author(s): 藤原治
  • Organizer: 歴史地震研究会
  • Place of Presentation: 明日都浜大津4階ふれあいプラザホール(滋賀県)
  • Year and Date: 2009-09-12
• [Presentation] 歴史資料の保全と古民家 (2009)
  • Author(s): 平川新
  • Organizer: 日本建築学会建築歴史・意匠部門研究協議会
  • Place of Presentation: 東北学院大学(宮城県)
  • Year and Date: 2009-08-27
• [Presentation] くりでん資料を未来に-宮城資料ネットの活動 (2009)
  • Author(s): 平川新
  • Organizer: 鉄道史学会
  • Place of Presentation: 栗原市エポカ21(宮城県)
  • Year and Date: 2009-07-04
• [Presentation] 阪神・淡路大震災から関西地区水害対応まで-歴史資料ネットワークの修復活動紹介 (2009)
  • Author(s): 河野未央
  • Organizer: 罹災文化財の救済処置技術意見交換会
  • Place of Presentation: 東北芸術工科大学本館301号室(山形県)
  • Year and Date: 2009-06-20
• [Presentation] 歴史と地質の情報から見た宝永地震に伴う遠州灘東部の隆起 (2009)
  • Author(s): 藤原治
  • Organizer: 日本地球惑星科学連合2009年大会
  • Place of Presentation: 幕張メッセ(千葉県)
  • Year and Date: 2009-05-20
• [Book] 国民国家の比較史 (2010)
  • Author(s): 久留島浩
  • Total Pages: 464
  • Publisher: 有志舎
• [Book] 「慶長遣欧使節と徳川の外交」『仙台市史特別編 慶長遣欧使節』 (2010)
  • Author(s): 平川新
  • Total Pages: 630
  • Publisher: 仙台市
• [Book] 第2回地域歴史資料学研究会報告書-文書館救済・防災に関する日独比較研究(平成21～25年度科学研究費補助金基盤研究(S)報告書) (2010)
  • Author(s): 奥村弘
  • Total Pages: 44
  • Publisher: 神戸大学大学院人文学研究科
• [Book] 「被災地フォーラムin神戸」報告書(平成21～25年度科学研究費補助金基盤研究(S)報告書) (2010)
  • Author(s): 奥村弘
  • Total Pages: 69
  • Publisher: 神戸大学大学院人文学研究科
• [Book] 水損史料を救う風水害からの歴史資料保全 (2009)
  • Author(s): 松下正和
  • Total Pages: 158
  • Publisher: 岩田書院
• [Book] 第1回地域歴史資料学研究会報告書(平成21～25年度科学研究費補助金基盤研究(S)報告書) (2009)
  • Author(s): 奥村弘
  • Total Pages: 66
  • Publisher: 神戸大学大学院人文学研究科
• [Book] 再生名建築 (2009)
  • Author(s): 足立裕司
  • Total Pages: 224
  • Publisher: 鹿島出版会
• [Book] 再生名住宅 (2009)
  • Author(s): 足立裕司
  • Total Pages: 154
  • Publisher: 鹿島出版会
• [Remarks]
  • URL: http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~chiiki/