2012 Fiscal Year Annual Research Report
小型衛星を目指した多素子X線マイクロカロリメータの開発
Project/Area Number |
21224003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大橋 隆哉 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70183027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 欣尚 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (10285091)
山崎 典子 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (20254146)
江副 祐一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90462663)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / 人工衛星 / 超伝導材料・素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではダークバリオンの探査を目指す小型衛星DIOSへ向けて、TESカロリメータ検出器の開発を行うとともに、冷凍機や読み出し系も開発し、衛星の実現へ向けたさまざまな検討を行う。H24年度は、多素子のTESカロリメータの製作のために、積層配線上にTESを作り込む方法の改良に取り組んだ。配線が作る段差の上にTESカロリメータを製作したところ、超伝導転移特性に問題のあることがわかり、TESの二層薄膜が段差のために破損することや、酸化膜が影響することがわかった。TES製作の改良して試みた一つの方法は、二層薄膜を厚くして段切れに対する強度を増すことであるが、試作した二層薄膜では超伝導転移温度が目標の100 mKより高くなってしまったほか、臨界電流が小さく、バイアス電圧を正しくかけることができなかった。これを踏まえて、産業技術総合研究所との共同研究として、配線がつくる壁を斜めに削り込む方法を検討した。一方、TESカロリメータの放射線耐性を調べた。放射線医学総合研究所で150 MeVの陽子を10 kRad (軌道上で受ける放射線10年分)あてたが性能に劣化は見られなかった。 また、X線マイクロカロリメータ並列読み出し試験を行ない、その結果に基づき直列読み出しとの比較等を行い、並列読み出しの改良によりエネルギー分解能の向上を目指した。この開発において、H24年12月以降、全国的な液体ヘリウム供給の逼迫が発生したため、研究費の一部を次年度に繰り越すことで評価実験を遅らせて実施し、H25年夏までに予定していた開発を行うことができた。 さらに、DIOS衛星としての検討を引き続き進め、冷凍機の電力が大きいという問題に対処するため衛星バスも合わせて検討することになり、太陽電池パドルを増やすほか、放射板パネルの設置方法なども検討を行った。高エネルギー宇宙物理学連絡会の評価委員会で最高のS評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TESカロリメータの開発及びDIOS衛星の検討において、研究は着実に進展してきている。積層配線が作られた基板の上にTESを製作する上で、問題点があることが明らかになったが、二層薄膜にダメージを与えないような製作として、配線が作る段差を斜めに加工することで 解決できる見通しを得ることができた。多素子のTESカロリメータとしての製作方法を確立するには何度かの試行が必要ではあるが、産総研との協力体制が整っている。放射線に対する安定性も陽子照射実験によって確認され、軌道上で性能劣化は起きないことがわかった。同時読み出しの方式も着実に進展し、ベースバンドフィードバックを用いた読み出しは期間内に一定の目処をつけることができる見通しである。液体ヘリウムの入手難が発生し、一部の開発実験に遅れが出たが、比較的短い遅れで実験を実施できており、また無冷媒冷凍機の導入も含めて、開発上の問題はほぼ解消できている。また、DIOS衛星としての検討が進んでいることも重要な進展である。冷凍機の電力が大きいことが問題であったが、これに対応するために4枚からなる太陽電池バドルを基本とし、実装案に基づいた熱的、機械的な検討も進んだ。ASTRO-Hのエンジニアリングモデルの試験が進み、機械式冷凍機の性能や消費電力の実績値が得られたことも重要な進展である。これらをもとに比較的早期にJAXAの小型衛星として本格提案できる見通しが得られている。また、高宇連の小型ミッション評価委員会による評価が行われ、最高のS評価を得たこともDIOS計画に弾みをつける結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
TESカロリメータの製作については、積層配線による段差を斜めに加工を行う方法で、最適なパラメータを探すための試作を引き続き行う。産総研とも議論し信頼性の高い製作方法についての検討を進めていく。TESの製作過程では超伝導転移特性を何度も測る必要があり、冷却にかかる手間と時間が開発のネックになってきたが、無冷媒の冷凍機が導入され、冷却を自動化し、超伝導転移特性の測定にかかる手間を大幅に減らせるようになった。これによりTES素子の開発効率を大きくアップさせると期待される。一方、ASTRO-H冷凍機の結果を取り込みながら、DIOS衛星の設計を更に詰め、電力、重量、機器配置などのより詳細な設計を行うことを目指す。このために関係メーカーと協議を行うとともに、NASAゴダード宇宙飛行センターのチームと議論し、国際協力でTESカロリメータを準備する耐性や具体的な設計についても検討を進めて行く。JAXAの小型衛星へ提案する際のTESカロリメータは、米国で稼働している実績のあるデザインをベースラインとしつつ、日米共同で製作することを目指しており、このためにそれぞれの分担を考えつつベースライン案の中身について検討を進める。
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Research Products
(11 results)