2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21224007
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
増田 康博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60150009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 淳讃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00262105)
畑中 吉治 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (50144530)
松多 健策 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50181722)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50353363)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | CP非保存 / 超冷中性子 / 基礎物理 |
Research Abstract |
UCN源:1 スパレーション標的、熱中性子、冷中性子モデレータ、中性子反射体、He-II容器、He-II冷凍器を組み立てた。2 真空系、温度モニター、UCNバルブ、冷凍器ニードルバルブの試験を行った後、パルスチューブ冷凍機、GM冷凍器による冷却試験を行い、温度分布を測定し、低温リークがないことを確かめた。3 GM冷凍器で重水固化と冷却を行い、陽子ビームによるスパレーション中性子源を働かせ、He-II容器に入射する冷中性子のエネルギースペクトルを中性子飛行時間法で測定した。4 4Heガス循環で、He-II生成と冷却試験を行った。5 He-II容器からUCNを取出し、同時にUCNスピンを偏極する超伝導コイルを完成させた。 EDM装置:EDM測定では、ラムゼー共鳴を観測するため、UCNが超伝導コイル型偏極装置を出た後、EDM測定容器、そしてUCN偏極解析器に導く。測定感度を上げるには、高いUCN偏極が必要となる。減偏極効果が少ないCuBe(2%)を用いてUCNガイドを製作した。磁場の一様性も重要である。測定器周りの残留磁化による微小磁場に注意しなければならない。測定容器に取り付けられているUCNバルブを完全に非磁性化した。外場の影響も小さくしなければならない。超伝導コイルからの漏れ磁場を相殺するためのコイル、さらに外場の影響を相殺するためのプロトタイプ3軸外場補償コイルを製作し、磁場測定を行い、外場補正が可能であることを実証した。さらに、外場の遮蔽を強化するため、4層の磁気遮蔽を設置した。静磁場が小さいとき、UCNをEDM容器に導入する時に、UCN偏極が崩れることがわかったので、導入経路の磁場分布を測定し、スピン移送系を改良した。EDM測定に使用する高電圧供給システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
UCN源については、計画通り、He-II生成用の冷凍器は完成し、He-II生成までたどり着いた。当初、一部の箇所で予冷に時間がかかることが予想されていたが、外部冷凍器で冷却したHeガスをHe-II冷凍器内に循環させることにより、予冷時間が大幅に短縮された。UCN密度を上げる上で、He-II UCN生成部に直結されHe-IIで満たされたUCN guideに、UCN valveを置くことが重要で、これには高度な技術が必要である。当初、UCN valveの駆動系がうまく動作しなかったが、問題点が判明し、これを修復した。そして、3He冷凍器によるHe-IIの生成と冷却を行おうとしていた矢先、ヘリウムの輸入が激減し、液体ヘリウムの供給が停止し、冷凍器の冷却試験とその後のUCN生成実験が行えなくなった。やむなく計画に遅れが生じてしまったが、この間、He-II容器からUCNを効率よく取出すための超伝導コイルを完成させた。これは、UCNの取出しと偏極を同時に行うことができ、EDM測定の高精度化に貢献するものである。一様磁場の構築に関しては、4層の磁気遮蔽消磁法、球面コイルの改造法の研究が進み、プロトタイプ外場補償コイルのテストが完了し、本番用のものがまもなく完成する。液体ヘリウム供給が再開されれば、EDM測定が行える状態となっている。 129Xe 核スピン磁力計は、予算不足で当初の計画に含められなかったが、ヘリウム供給停止の間、磁力計早期実現に向けて、Rb-Xeスピン交換型光ポンピングによる129Xeスピン偏極法、そしてEDM容器への偏極129Xeガス導入法の開発に着手した。また、129Xe核スピンの歳差運動観測のため、2光子共鳴吸収法およびラムゼー共鳴法の検討を行った。前者については、実現の鍵となる連続波真空紫外レーザー装置に要求される性能について詳細に検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
液体ヘリウムの供給が再開すれば、新UCN源の運転を開始することができ、新UCN源の性能を調べ、EDM測定を開始することができる。ヘリウムの輸入は、この夏に回復する見込みである。液体ヘリウムの供給をより安定にするため、冷凍器で使用された後に放出されるヘリウムガスを再液化するための回収系を完成させた。 EDM測定の精度を上げるには、高いUCN偏極が必要である。そのため、偏極UCNガイドの材料として優れた性質を持つベリリウムが最適である。しかし、非常に高価であるため、当初CuBe(2%)を使用しようとしていた。CuBe(2%)はUCN偏極保持は問題ないが、UCNに対するポテンシャルが低いのが難点である。液体ヘリウム供給停止の間、この問題をより詳細に検討した。NiMo被覆が良い、しかも比較的安価であると判明したので、NiMo被覆UCNガイドに変更する予定である。また、系統誤差がより小さくするには、電場の一様性も重要である。液体ヘリウム供給停止の間、一様電場発生のため、シミュレーションによる電極の研究を行った。電極間の高電圧リークがある場合は、容器の表面などのリークのパスを長くする事で改良を行い、リーク電流が発生する磁場を小さくし系統誤差を小さくする。また、4重磁気シールドのより完全な消磁を行い、残留磁化による磁場をなくし、UCN偏極の横緩和を少なくし、才差運動の時間を延ばして、ラムゼー共鳴の感度を上げる。 高偏極129Xeを達成するための、Rb, Xe, N2 混合ガスの最適条件を決定し、コールドトラップによる偏極129XeガスのEDM容器への導入試験を行う。129Xeのラムゼー共鳴による精密磁場測定試験を行う。真空紫外レーザー装置の建設に向けては、新たに予算獲得を目指す。
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Research Products
(18 results)