2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21227002
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡田 典弘 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (60132982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10450727)
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70432010)
梶川 正樹 東京工業大学, 生命理工学研究科, 講師 (90361766)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 大進化 / 種分化 / 生物多様性 / 新規形質獲得 |
Research Abstract |
1)種分化研究:これまで東アフリカ産シクリッドにおいて2つのアリルグループに分かれる形での多型性が確認されていたシクリッドフェロモン受容体候補V1R1、V1R2遺伝子の染色体上の位置を確かめるために、ヴィクトリア湖産シクリッドの遺伝子連鎖地図の作製と、それを用いた性決定遺伝子座のマッピングをおこなった。その結果、2つの遺伝子座はともに性決定領域と非常に近い位置(~3cM程度)に存在することが明らかとなった。また、昨年度までにヴィクトリア湖シクリッドの1種でメス化を起こすB染色体を報告したが、本年度はこのようなメス化を起こす遺伝子の単離を試みた。ゲノム解析からB染色体の配列を決定すると、完全長が保存された遺伝子が存在することが明らかになった。そして、この遺伝子は性決定に感受性のある発生段階でB染色体から発現していることが明らかになった。 2) 大進化研究:本研究でこれまでに得られた3つのSINE由来エンハンサー(AS071、AS3_9、AS021)に関して、詳細な解析、特にノックアウトマウスを用いた解析をおこなった。平成24年度はAS071が多機能エンハンサーであることを証明し(Nakanishi et al. 2012)、さらにAS071遺伝子座の欠損マウスにおけるfgf8等の遺伝子発現解析もおこなった。AS3_9エンハンサーの欠損マウスにおいてもその制御対象遺伝子であるwnt5aの発現が低下したことを証明した。さらにAS021の欠損マウスについて表現型および遺伝子発現パターンを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)種分化研究において、当初予定していた種分化機構の普遍性を示す研究は予定通りに進行している。まずLWSの研究を代表とする研究により、シクリッドの様々な種が持つ光受容体がそれぞれ生息する光環境に適応していることを示した。またシクリッドの婚姻色形成遺伝子群を単離するため、次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析をおこなった。これによりオスで多く発現する数百の遺伝子を単離し、それらの婚姻色形成遺伝子群の染色体上の位置も明らかにした。これにより、性選択が婚姻色を分化させ種分化を引き起こしてきたといった種分化機構の解明に向けて大きく前進している。さらに当初の計画以上に研究が進んだ点としては、ヴィクトリア湖産シクリッドの連鎖群解析が大幅に進展し、性決定候補領域の絞り込みをおこなったことである。 2)哺乳類の大進化研究では、これまでに5遺伝子座のSINE由来エンハンサーを発見し、当初の計画に沿って詳細な解析を進めている。特にAS021およびAS071遺伝子座がそれぞれSatb2とFgf8遺伝子のエンハンサーであることを証明してきた。これら2つのエンハンサーに加え、AS3_9遺伝子座に関しては当初の予定通りにノックアウトマウスを作成し、遺伝子発現解析および表現型解析を進めている。さらに、転写因子の結合モチーフ解析および結合実験により、AS021に結合する転写因子が複数のSINE由来エンハンサーに結合する可能性が浮上したことが挙げられる。こうして哺乳類進化に関与した複数の遺伝子発現がSINEを介した同一の制御メカニズムによって決定されている可能性を見出したことが、当初の予想以上に進展した点である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)種分化研究:昨年度の研究成果により、性決定領域が存在することが推定された連鎖群について、さらに多数の遺伝マーカーを追加作成し、またシクリッドの全ゲノム配列情報を用いて、候補領域内に存在する性決定関連遺伝子を探索する。また、性決定候補領域の遺伝マーカーを用いて各種シクリッド親個体から子個体へのアリルの伝搬を観察し、性決定システムの推定をおこなう。さらに大きく2つのアリルグループに分かれるといった特異なV1R遺伝子の進化パターンと性決定との関連性を考察する。 2) 大進化研究:これまでに得られたSINE由来エンハンサーのうち、AS071エンハンサーのノックアウトマウスを用いた解析は既に終えており、今年度前半に論文として発表する予定である。またAS021、AS3_9の欠損マウスも完成し、表現型解析が完了した時点で論文を作成する予定である。最終的に全データをまとめ、本研究の目的であるSINEがもたらした哺乳類特異的な形態形成メカニズムを明らかにする。
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[Journal Article] Extremely slow rate of evolution in the HOX cluster revealed by comparison between Tanzanian and Indonesian coelacanths.2012
Author(s)
Higasa K, Nikaido M, Saito TL, Yoshimura J, Suzuki Y, Suzuki H, Nishihara H, Aibara M, Ngatunga BP, Kalombo HW, Sugano S, Morishita S, Okada N.
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Journal Title
Gene
Volume: 505
Pages: 324-332
DOI
Peer Reviewed
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