2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21227005
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高井 義美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60093514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50559177)
栗田 宗一 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30595484)
富樫 英 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90415240)
下野 洋平 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)
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Keywords | アドヘレンスジャンクション / タイトジャンクション / 異種細胞間接着 / ネクチン様分子 / ネクチン / アファディン |
Research Abstract |
本年度は研究計画の達成に向けて、以下の研究を実施した。 (1) 上皮細胞におけるアドヘレンスジャンクション(AJ)とタイトジャンクション(TJ)の位置決定機構:上皮細胞では細胞間接着形成が完成すると、細胞極性により細胞間接着部位で側基底側領域と頭頂側領域が分離し、TJが常にAJの頭頂側に形成される。本年度は、口蓋の発生過程をモデルに、多層からなる上皮組織でのATとTJの局在およびその動態を解明した。さらに、これまでの知見を発展させ、ネクチンを介した細胞間接着が、聴覚上皮における市松模様様の細胞配列の形成に必須であることを解明することで、異種細胞間接着の形成に関わる分子機構を哺乳動物において初めて明らかにした。 (2) 上皮-間葉転換(EMT)と間葉-上皮転換(MET)における形態変化の分子機構:報告者らは、上皮細胞が遊走し始めるEMT初期過程では、ネクチン様分子(Necl)-5、血小板由来成長因子(PDGF)受容体、およびインテグリンαvβ3の協調が重要であることを示してきた。本年度は、Necl-2による細胞接着装置ヘミデスモソームの制御の分子機構、アファディン結合タンパク質ADIPによる運動先導端におけるEMTを介した細胞運動の制御機構、およびAJ構造の形成過程でのNecl-5とネクチン-3およびアファディンのポジティブフィードバック機構について解明した。 (3) 神経細胞におけるシナプスの形成・リモデリング機構:軸索が別の神経細胞の樹状突起と接着してシナプスを形成する際、シナプス結合部にあるアクティブゾーンとPSDを取り囲むように形成されるPuncta adherentia junctionにネクチンとアファディンは局在する。本年度は、樹状突起のスパイン形成やシナプスの形成過程におけるアファディンや他の細胞接着分子の重要な働きを解明し、解析をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでの細胞の“形”に関する先行研究に加えて、3 つの要因、すなわち、細胞外シグナル分子、細胞間接着、細胞-基質間接着が細胞形態に及ぼす作用を統合的に検討してきた。本研究を通じて、上皮細胞においてTJ とAJの配置を規定する分子機構を明らかにし、上皮細胞が運動能を獲得する際の分子機構を示すとともに、それらが、細胞の浸潤やがん細胞の浸潤、口蓋の発生などに関与することを明らかにした。また、上皮細胞の細胞間接着機構の解析から、神経におけるシナプス形成機構が理解できることも示した。このように本研究は全く新しい観点から細胞形態の分子機構を解明してきた。さらに、本研究課題をさらに発展させ、報告者らが発見して研究してきたネクチンを介した細胞間接着機構が、異なる細胞間に適切にAJを形成し、全体として市松模様様の細胞配列をもつ組織を形成するのに重要な働きをもつことも示した。これは、複雑な細胞配列をもつ上皮組織を形成する分子機構を哺乳動物において初めて示した知見であり、細胞間接着の研究による組織、器官形成、病態の理解に向けて大きな方向性を示した。したがって、本研究の成果は、細胞の形態形成機構に関する研究分野の新展開となるだけでなく、高等生物における生命現象全般の分子機構解明に向けた端緒にもなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究目的の達成に向けて、以下の3点について研究を実施する。 (1) 上皮細胞におけるアドヘレンスジャンクション(AJ)とタイトジャンクション(TJ)の位置決定機構:上皮細胞では細胞間接着形成が完成すると、細胞極性により側基底側領域と頭頂側領域が分離し、TJがAJの頭頂側に形成される。本研究を通じて報告者らは、この機構には、従来から推測されてきたカドヘリンではなく、ネクチンとJAMに加え、一連の極性因子の発現が必須であることを見出してきた。本年度はこれまでに得られた結果をもとに、ネクチン-アファディン系分子の結合タンパク質の解析などを通じて、TJとAJの形成過程を制御する分子機構の解明をすすめる。 (2) 上皮-間葉転換(EMT)と間葉-上皮転換(MET)における形態変化の分子機構:EMT初期過程では、上皮細胞のコロニー端で運動先導端が形成され、Necl-5、インテグリンαvβ3、および血小板増殖因子受容体の三者が集積して方向性をもった細胞運動を行う。本年度は、これら一連の結果を踏まえ、NeclによるEMTに関わるシグナル伝達の制御機構についてさらに検討を行う。 (3) 神経細胞におけるシナプスの形成・リモデリング機構:シナプス結合部にあるアクティブゾーンと後シナプス構造(PSD)を取り囲むように形成されるPuncta adherentia junctionにネクチンとアファディンは局在する。本研究を通じて報告者らは、シナプスの形成過程での樹状突起におけるスパインの形態形成や、前シナプスのアクテイブゾーン構造およびPSDの形成におけるアファディンの働きを解明してきた。本年度は、ネクチン-アファディン系のノックアウトマウスを用いて、シナプス安定化とリモデリングに関わる分子機構や、軸索の選択的形成機構についてさらに検討を行う。
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Research Products
(25 results)