2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21227005
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高井 義美 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命教授 (60093514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 洋平 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命助教 (50559177)
栗田 宗一 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30595484)
富樫 英 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90415240)
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
溝口 明 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90181916)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | アドヘレンスジャンクション / タイトジャンクション / 異種細胞間接着 / ネクチン / ネクチン様分子 / アファディン |
Research Abstract |
本年度は研究計画の達成に向けて、以下の研究を実施した。 (1) 上皮細胞におけるアドヘレンスジャンクション(AJ)とタイトジャンクション(TJ)の位置決定機構:上皮細胞では細胞間接着形成が完成すると、細胞極性によりTJが常にAJの頭頂側に形成される。また、ネクチンは、同種細胞間のみならず異種細胞間の細胞間接着の形成にも関わる。本年度は、発生過程の口蓋上皮では、最表層にあるペリダーム間に加え、ペリダームとその直下の上皮細胞との間にもAJが存在すること、および精上皮では、免疫グロブリン様タンパク質Mpzl2が細胞接着分子ネクチン様分子(Necl)-2の働きを代償することを解明した。(2) 上皮-間葉転換(EMT)と間葉-上皮転換(MET)における形態変化の分子機構:EMT初期過程では、Necl-5、血小板由来成長因子受容体、およびインテグリンαvβ3が協調する。また、Necl-2は細胞接着装置ヘミデスモソームの制御に関わる。本年度は、miR-214や低酸素をはじめとした複数の機構がNecl-2の発現を抑制し、細胞運動の促進に関わるErbB2/ErbB3シグナル伝達系を活性化することを解明した。また、TGF-βにより誘導されるペリダームの細胞接着の変化と剥離が、口蓋上皮細胞のEMT様の細胞形態変化と遊走に関連することを解明した。(3) 神経細胞におけるシナプスの形成・リモデリング機構:シナプス結合部にあるアクティブゾーンとPostsynaptic density(PSD)を取り囲むように形成されるPuncta adherentia junction(PAJ)にネクチンとアファディンは局在する。本年度は、樹状突起の形態形成におけるアダプタータンパク質ZO-1の働きや、ネクチン結合タンパク質アファディンのシナプス形成における役割を中心に解析をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでの細胞の“形”に関する先行研究に加えて、3 つの要因、すなわち、細胞外シグナル分子、細胞間接着、細胞-基質間接着が細胞形態に及ぼす作用を統合的に検討してきた。本研究を通じて、上皮細胞においてTJ とAJの配置を規定する分子機構および上皮細胞が運動能を獲得する際の分子機構を示すとともに、それらが、細胞の浸潤やがん細胞の浸潤、口蓋の発生、さらには神経におけるシナプス形成機構などにも関与することを明らかにした。また、マイクロRNAや低酸素環境など複数の細胞内外の因子により制御される細胞接着分子の発現の変化が、発生やがんに果す役割を明らかにしてきた。このように本研究は全く新しい観点から細胞形態の分子機構を解明してきた。さらに本研究課題では、報告者らが発見して研究してきたネクチンを介した細胞接着機構が、異なる細胞間に適切にAJを形成し、全体として市松模様様の細胞配列をもつ組織を形成するのに重要な働きをもつことも示した。これらの知見により、複雑な細胞配列をもつ上皮組織を形成する分子機構が明らかになり、細胞間接着の研究による組織、器官形成、病態の理解に向けて大きな方向性を示した。したがって、本研究の成果は、細胞の形態形成機構に関する研究分野の新展開となるだけでなく、高等生物における生命現象全般の分子機構解明に向けた端緒にもなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究目的の達成に向けて、以下の3点について研究を実施する。 (1) 上皮細胞におけるAJとTJの位置決定機構と細胞丈の決定機構:上皮細胞では細胞間接着形成が完成すると、細胞極性により側基底側領域と頭頂側領域が分離し、TJがAJの頭頂側に形成される。本研究を通じて報告者らは、この機構には、従来から推測されてきたカドヘリンではなく、ネクチンとJAMに加え、一連の極性因子の発現が必須であることを見出してきた。次年度はこれまでに得られた結果をもとに、TJとAJを構成するタンパク質を細胞に導入した再構成系を用いて、TJがAJの頭側に形成される分子機構をさらに詳細に明らかにしていく。(2) EMTとMETにおける形態変化の分子機構:EMT初期過程では、上皮細胞のコロニー端で運動先導端が形成され、Necl-5、インテグリンαvβ3、および血小板増殖因子受容体の三者が集積して方向性をもった細胞運動を行う。次年度は、これら一連の結果を踏まえ、Necl-2やNecl-4がEMTに果す役割や、それらの発現の制御に関わる分子機構の解明に向けて研究を進める。(3) 神経細胞におけるシナプスの形成・リモデリング機構と軸索の選択的形成機構:シナプス結合部にあるアクティブゾーンとPSDを取り囲むように形成されるPAJにネクチンとアファディンは局在する。本研究を通じて報告者らは、シナプスの形成過程や、樹状突起におけるスパインの形態形成、前シナプスのアクテイブゾーン構造およびPSDの形成におけるアファディンをはじめとした細胞接着分子の働きを解明してきた。次年度は、ネクチン-アファディン系のノックアウトマウスを用いて、神経細胞におけるシナプス安定化とリモデリングに関わる分子機構や、軸索の選択的形成機構についてさらに検討を進める。
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Research Products
(15 results)