2011 Fiscal Year Annual Research Report
情動的環境要因の受容がもたらす感性脳機能的作用とそのメカニズムの解明
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21240020
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久野 節二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70136216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩本 義輝 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50184908)
尾崎 繁 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60292546)
首藤 文洋 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10326837)
山中 敏正 筑波大学, 芸術系, 教授 (00261793)
川野 道宏 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (00404905)
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Keywords | 環境 / 感覚刺激受容 / 異種感覚統合 / 安らぎ / 脳活動 / ストレス / 物づくり |
Research Abstract |
ヒト対象のクロスモーダル感覚刺激実験パラダイム設計では、被験者(12名)を対象にストレス負荷下で聴覚・視覚刺激を提示し、脳と自律神経の活動を調べた。防音室内でストレス群(不動起立姿勢保持)と対照群(着座・安楽姿勢)に、聴覚刺激(ホワイトノイズ・川のせせらぎ等)を提示した結果、不動姿勢による心拍数増加に聴覚刺激が影響しないこと、前頭葉活動は両群で明瞭な差異がないことが示された。動物モデル実験に対応したこのヒト対象実験パラダイムによる聴覚と視覚(照明の有無)のクロスモーダル実験では、不動姿勢による心拍数増加は暗黒よりも照明下で顕著だが、これに聴覚刺激は影響しないことが示された。感性工学的もの作りと環境設計については、MRI室内での足首運動タスクのツール画面表示・周辺機材の対磁場性問題が解決され、足運動時の脳活動解析が実行可能な状況がほぼ確立できた。モデル動物による環境の感性効果の解析では、眼球運動課題を訓練したマカクザルでリラックス度・注意関心度について注視課題パフォーマンス、反応時間、運動の最大速度の間の関係を調べ、これらの指標に対する背景音(ホワイトノイズ、滝の音)の効果を解析した。注視課題パフォーマンスは独立して変化し、他の指標は互いに相関することが判った。ホワイトノイズから滝の音へ背景音が変わると注視課題パフォーマンスは一定で、反応時間が増加、最大速度が低下する傾向があった。背景音の違いが反応時間・最大速度に影響することからリラックス度と環境音との関連が示唆された。マーモセット研究では、感情・社会性の神経生物学的解析に向け、視覚弁別課題作成のために動物の嗜好性を調べ、報酬候補を決定した。また、ストレス応答の指標として尿中コルチゾールの測定法を決定した。ラット研究では、特定周波数の音刺激が副腎皮質機能を制御する視床下部神経細胞のストレス応答活動を減弱させることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感性工学的もの作りを評価する運動タスク遂行時の脳機能イメージング実験設計において、実験装置・タスクツールの開発が遅れているが、その他のサブテーマについてはいくつかの新知見が得られ、既に学会で成果を発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト対象のクロスモーダル実験については、実験パラダイムを確立することができた。これを基盤に実験を行い自律神経活動に及ぼす環境刺激の影響については一定の結果を得たが、クロスモーダル効果については明確な結果を得ていない。また、NIRSによる前頭葉活動の計測では、明確な結果を得ることができなかった。今後は、ヒト対象の脳波解析を取り入れた研究を進めていく予定にしている。運動タスク遂行時の脳イメージング解析については、漸く基本的な道具立てが揃ってきたので、今後はパフォーマンス評価結果の被験者へのフィードバック教示の方法等について検討するために、精神的報酬性や対人・社会性などの要因を加味したパラダイムを遂行して行く予定である。
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