2011 Fiscal Year Annual Research Report
連続プランクトン観測システムによる地球規模環境変動の海洋生態系への影響評価
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21241012
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
千葉 早苗 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (40360755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉崎 宏哉 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究室長 (50371795)
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Keywords | CPR / 北太平洋 / 動物プランクトン / 広域モニタリング / 長期変動 / 生態系変動 |
Research Abstract |
北太平洋連続プランクトン採集器(CPR)観測プロジェクトに基づき、西部北太平洋亜寒帯域(145-170°E,45-60°N)で採集された2000-2009年の植物・動物プランクトンサンプルを分析し、衛星クロロフィルデータ及び水温データと合わせて経年変動解析した結果、北太平洋十年規模変動(PDO)に関連した低次生態系の生物季節的変化や群衆構造変化が明らかになった。 東経155°以西の親潮域において、植物プランクトンに関しては、PDOが正の年に冬~春の水温が負偏差となりブルームが遅れ、反対にPDOが負の年には水温が正偏差となりブルームが早くなる傾向にあり、寒暖の度合いが混合層の成層化のタイミングを左右し、ブルームの時季に影響したことが推測された。また、PDOが正の年は春~夏にかけての水温上昇の度合いが大きくなり、夏季の珪藻に対する渦鞭毛藻の割合が大きくなることが解った。 同じく親潮域における動物プランクトンに関して、初夏の植食性主要カイアシ類種であるEucalanus bungiiの成長のタイミングが、PDO=正の年に遅れる傾向にあり、ブルームの遅れや、植物プランクトン種組成の変化の影響であると考えられた。一方、比較的雑食性の傾向があるNeocalanus plumchrusでは、逆にPDO=正の年に成長が進む傾向が見られ、両種の摂餌生態や生活史の違いがその要因となったことが示唆された。 PDOによる水温偏差は北太平洋の東西で逆の経年変動パターンを取る。来年度以降は、カナダ側の研究協力者とともに、東西海域比較研究を実施し、PDOに対する低次生態系の応答過程について海盆スケールの解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り2009年までのCPRサンプルを分析、データ解析し、気候の十年規模変動に対する西部北太平洋の低次生態系の応答機構について明らかにすることができた。しかしながら、年度途中で本科研費により雇用しているポスドクが出産のため休暇に入り、論文や学会発表の形での成果の公表が多少後ろ倒しとなった。よって、おおむね順調に進展しているとする。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目以降は、当初計画通り、カナダ側研究者と協力し、東西北太平洋で採集したCPRデータを用いてPDO等気候の経年変動に対する2001年以降の低次生態系の応答機構を東西海域比較していく。同時に、2010~2012年に新たに採集されたCPRサンプルの顕微鏡分析をすすめ種組成データをアップデートしていく。得たデータは、国際CPR観測を主導している英国ハーディ研究所およびPICESのウェブサイトを通じて公表する。8~9月にポスドクが産休から復帰した後は、論文を含め迅速に成果の公表を実施する。
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