2012 Fiscal Year Annual Research Report
連続プランクトン観測システムによる地球規模環境変動の海洋生態系への影響評価
Project/Area Number |
21241012
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
千葉 早苗 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (40360755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 忠史 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (50371886)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | CPR / 北太平洋 / 動物プランクトン / 広域モニタリング / 長期変動 / 生態系変動 |
Research Abstract |
北太平洋連続プランクトン採集器(CPR)観測プロジェクトに基づき、北太平洋亜寒帯域(145-230°E,45-60°N)で採集された2000-2011年の植物・動物プランクトンサンプルを分析し、季節経年変動解析を実施した。 植物プランクトンの変動に関しては、衛星クロロフィルデータ及び水温データと合わせて解析した結果、北太平洋十年規模変動(PDO)に関連した水温の経年変動に応じた低次生態系の生物季節的変化や群集構造変化が明らかなり、結果を論文として発表した (Chiba et al., 2012, Geophysical Research Letters) 。 また、海外研究協力者と共同で、海域比較のために動物プランクトン群集のサイズインデックスを設定し、東西北太平洋の動物プランクトン組成の経年変動パターンを比較した。その結果、東西ともにPDOシグナルが正から負へと変化する2006/2007年を境にサイズ組成が顕著に変化していたことが分かった。PDOによる水温偏差は、北太平洋の東西で逆の経年変動パターンを取ることから、2006年以降西部では温暖傾向、東部では寒冷傾向が顕著となった。しかし、水温に対する動物プランクトンの応答は東西で異なっていた。西部(145-170°E)では温暖傾向に伴い、Neocalanus spp. が増加した結果、全体に占める大型種の割合が増加したが、東部(170-230°E)では、同様の水温との関係は明確でなく、むしろ寒冷傾向に応じてNeocalanus spp.が増加していた。このことは、共通の気候フォーシングや温暖化等地球規模環境変動に対する生態系の応答が海域毎に異なることを示唆している。来年度はその違いの要因となるメカニズムを調べ、論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、2011年度までのサンプルを分析し、データ解析をすすめ、海外研究協力者と共同で、東西北太平洋における気候の十年規模変動に対する海洋生態系の応答について海域比較研究を実施した。2011年(平成23年)より産休を取っていた当該科研費雇用によるポスドク研究員の復帰が諸事情により遅れたため、論文や学会発表での成果公表が多少後ろ倒しになったものの、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、気候変動に対する海洋生態系の応答メカニズムに関する東西北太平洋の海域比較研究を進めるとともに、CPR観測サンプルの分析を2013年度分まで進め、データをアップデートする。整備したデータは、国際CPR観測を主導している英国ハーディ研究所およびPICESのウェブサイトを通じて公表する。また、国際CPR観測ネットワークへの参加を通じて、海洋生態系変動の地球規模比較研究を展開していく。2012年9月に産休から復帰したポストドクトラル研究員を指導し、論文を含め迅速に成果の公表を実施する。
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