2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21242006
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
谷川 恵一 National Institute of Japanese Literature, 複合領域研究系, 教授 (10171836)
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Keywords | 国文学 / 文学論 / 芸術諸学 / 思想史 |
Research Abstract |
短い作品や断片(Fragment)を集成し、一つの著作や集(Collection)にまとめる手法は、日本文学の有力な編成原理である。こうした「断片」と「集」の相互連関を日本文学・文化史の中で明らかにすべく、フランス側の研究者を交えた研究会を2009年8月及び2010年2月に国文学研究資料館において開催し、それらを踏まえ2010年3月にパリにて講演会・ワークショップを開催した。これらを通じ、本年度は、平安から鎌倉時代にかけての宮廷社会における闘詩(詩合)と歌合せの展開、及び、20世期初頭のパリ在住の日本人留学生たちによる句会の実践とその後のフランスの俳譜受容について、前者においては当該時代の闘詩・歌合わせ作品を、後者においては留学生が編輯した『パンテオン雑誌』を取り上げながら、フランス人研究者との活溌な議論を通して、和歌や俳句といった短詩型文学が日本文化の中でどのように営まれてきたか、問題点を整理した。複数の人間が集まり、決められた題に基づいて作品を作りあうことが、一方では題詠という桎梏に個々の作品を拘束するように作用すると同時に、それ以外に言説を統合する強力な論理を所有しないことが、他方で、個々の作品の本質的な断片化を結果させることにもなるという点が、これからの研究を進めていく出発点として確認された。
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