2012 Fiscal Year Annual Research Report
外国語運用能力の熟達化に伴う言語情報処理の自動化プロセスの解明
Project/Area Number |
21242013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横川 博一 神戸大学, 国際コミュニケーションセンター, 教授 (50340427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定藤 規弘 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (00273003)
東矢 光代 琉球大学, 法文学部, 教授 (00295289)
松本 絵理子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (00403212)
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20347785)
田邊 宏樹 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20414021)
籔内 智 京都精華大学, 人文学部, 准教授 (30324833)
村上 正行 京都外国語大学, マルチメディア教育研究センター, 准教授 (30351258)
吉田 晴世 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40210710)
吉冨 朝子 東京外国語大学, 総合国際学研究科, 教授 (40272611)
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
菅井 康祐 近畿大学, 経済学部, 准教授 (90454636)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 認知脳科学 |
Research Abstract |
外国語習得にあたっては,言語処理の自動化(automatization)が重要な役割を果たすことは広く認識されているが,そのメカニズムは明らかにされていない。本研究は,外国語学習者を対象として,外国語運用能力の熟達化に伴う言語情報処理の「自動化」(automatization)のプロセスを,行動実験に基づく心理言語学,fMRIを中心とする脳科学実験に基づく神経心理学,学習実験に基づく言語教育学の3つのアプローチによって明らかにした。 その結果,①行動実験およびfMRI実験により,未知言語の語彙の音声・意味の連合学習には反復によって学習成績が上がり,語彙学習時に口頭反復をすることによって、右小脳が音韻情報の記憶痕跡(内部モデル)を形成し、左紡錘状回での連合処理時に付加的に働き、効率的な学習が行われることが明らかとなった。②文理解実験により,外国語学習者は,言語処理の基盤を成す統語処理に困難があり,複文構造では処理容量に関係なく意味理解に支障をきたす程度の困難性を示すが,学習によって統語処理の自動化が促進されることが明らかとなった。③文産出実験により,外国語学習者は熟達度によって脳内統語表象が異なること,接触回数によってプライミング効果に変化が生じ,脳内統語表象が強化されることを明らかにした。④第二言語音声処理において,熟達度に応じて文構築では前頭前野背外側部の活動が低くなり,一方,文章理解ではブローカ野の活動がより高くなっていたことから,前頭前野二領域の可塑的変化が第二言語音声処理の自動化に深く関わっていることを示し,外国語習得過程を基礎づける記憶システムに移行が起こることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22~24 年度は,平成21年度に行った基礎研究データ等を踏まえ,語彙処理のさらなる調査および言語理解,言語産出の各側面について実験を行い,言語処理の自動化プロセスを明らかにすることを目標としていた。具体的に設定した,①未知語の音声・意味の連合学習に関する行動実験およびfMRI実験,②文理解における統語・意味情報の利用可能性に関する行動実験および脳波実験,③文産出における語彙・統語処理に関する行動実験およびfMREI実験,④音声言語処理における統語処理と意味処理の関係性といった研究課題について,すべて実験を終え,外国語運用能力に伴う言語情報処理の自動化プロセスについて総括できる段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
外国語習得の基盤となる言語知識(語彙・音声・統語・意味)とその運用の発達プロセスの解明への脳機能画像を用いた解析の試みが順調に進み,学習者の脳内で起こる言語処理の自動化現象をfMRIを用いて直接観察する準備が整った。 今後は,外国語学習者を主たる対象として,相互作用を伴う社会文化的枠組み-ダイアローグの環境下-における第二言語の獲得・処理・学習の認知プロセスを,心理言語学的行動実験および脳神経心理学的アプローチによって総合的に解明したいと考えている。 母語,外国語にかかわらず,従前の言語処理研究はモノローグを対象としており,また,理解と産出の側面が別々に研究されてきた。社会文化的アプローチによるダイアローグの枠組みで,伝達意図の表現と理解を,行動・学習・脳の相互関連性において,学習者の内部に生じる言語を含めた認知構造の変化を解明することが,第二言語の獲得・処理・学習モデルを構築する上できわめて重要な役割を果たす。また,教育の見地からも社会的要請が大きく,早急な取り組みが必要であるものと考えている。
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Research Products
(58 results)