2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21242029
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
臼杵 勲 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (80211770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
木山 克彦 北海道大学, スラブ研究センター, 助教 (20507248)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (60270401)
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 極東 / 初期鉄器時代 / 靺鞨 / 東夷 / 防御集落 |
Research Abstract |
24年度は,9月に沿海地方北部において,初期鉄器時代防御集落であるエリザベトフカ1遺跡の住居址発掘調査を継続し,23年度確認した沿海地方南部・アムール流域と共通性を持つ初期金属器文化の内容をさらに詳細に確認した。特に、土器・磨製石器等の組成が明らかになり、住居の特徴も把握することができた点が重要な成果である。さらに初期鉄器時代後期に関わると考えられる遺構の確認も行った。調査遺構からは年代測定試料も採取した。また、併せてロシアの既存資料の調査を行い、初期鉄器文化から靺鞨文化への変遷過程に関する資料収集を行った。 調査資料の整理・分析は、昨年度までの資料と併せて進め、測図・写真撮影等の資料の記録化は2月に集中して行った。また、金属加工の特徴を解明するためのスラッグ等の分析、採取植物資料の同定、石器使用痕分析の作業を進めた。採集試料の年代測定を進め、初期金属器~鉄器時代の鉄器の暦年代の決定の資料を蓄積した。また新たに,土器片から,付着炭化物の採取を行うことができ,文化編年確定の鍵となる試料を得ることができた。 さらに、前年度から明らかになってきた韓国・モンゴル・バイカル地域等の周辺地域との関連性を探るため、製鉄関連資料・土器資料等の比較資料の調査を行うとともに、現地研究者との意見交換を行った。さらに、文献等による各国の遺跡データの収集・整理を行い、初期金属器~鉄器時代の比較資料を収集整理し、データベース作成を進めている。 24年度は,従来の成果を基に広域編年等の具体的な作業も伸展させ、ロシア・中国・韓国の最新成果も併せて、文化変遷・暦年代・併行関係についておおまかな見通しを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査はほぼ目的通りに進み、分析試料収集は、生業・植生関連の遺存体にやや不足が見られ、生業の解明にはさらに収集・分析作業が必要であるものの、金属生産関連試料と年代測定試料は着実に蓄積され、分析により一定の成果をあげている。また、調査成果から初期金属器時代~鉄器時代の新たな文化複合を確認し、その内容を明らかにしつつある点は、当該地域における集団の形成を考える上で重要な成果といえる。さらに初期鉄器時代集落についても、現地調査と収集データを基にした内容の把握が進んだ。 さらに、文化編年・金属生産に関する周辺地域との関連性を明らかにするため、24年度は韓国・モンゴル等の資料調査・データ収集を積極的に進め,資料を大幅に増加させた。収集試料の分析結果をふまえた技術的関連・広域編年等の解明についてもおおむね見通しを得ており、次年度において一定の結果に至ることが可能な段階に進んだ。 さらにロシア・中国・韓国等の各国研究機関との連絡・情報交換により,研究の国際化も順調に進んでいる。既存遺跡に関する資料収集と、広く利用可能な形態でのデータ化も順調に進めており、25年度に公開・配布を可能とできる見通しを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は最終年度にあたるため、ロシア沿海地方での発掘調査は、既存の調査資料の補足資料を得る範囲で実施し、同時に周辺の集落遺跡の様相を把握するために分布調査を実施する。両者を併せて分析し、当該地域の初期金属器時代~初期鉄器時代文化の内容を確定する。また資料収集についても、実物資料・文献資料を中心に作業を進める。さらに、同様な特徴を持つ集落遺跡の分布や立地分析を進め、初期鉄器時代後期の集落の様相を明らかにする。また、試料分析結果をふまえ、広域編年、各種生産の実態を明らかにする。極東地域における防御集落等の分析作業を進め、各種作業の結果をまとめる。さらに,既存調査資料を収集しつつ周辺地域との関連性をより詳細に明らかにする。 なお、これまでの研究で、特に草原地域との技術・文化交流の影響を認めることができたため、特にこの点についての解明を目的とした既存資料を中心とした予備的研究にも着手し、今後の研究上の課題を明確化する。 また,調査資料・収集資料による極東及び周辺地域の初期鉄器時代遺跡のデータベース・GIS化の作業は継続して進展させ、公開・配布可能な形態とする。 今年度の現地調査終了後,冬季に研究参加者による国際研究集会を開催し、調査と分析成果に関連して、報告・意見交換を行い、最終的な成果を総合的に取りまとめる。以上の結果を受けて、成果全体を総括し、年度末までに研究報告書を刊行する予定である。
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