2011 Fiscal Year Annual Research Report
輻射輸送シミュレーションが解き明かすALMA時代の天文学
Project/Area Number |
21244021
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
富阪 幸治 国立天文台, 理論研究部, 教授 (70183879)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 桂一 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30261358)
相川 祐理 神戸大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40324909)
大向 一行 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70390622)
町田 正博 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (10402786)
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Keywords | 理論天文学 / 計算物理 / 観測的可視化 / シミュレーション / 輻射輸送 / 星間化学 / 星形成 |
Research Abstract |
1.磁気流体力学シミュレーションによって得られた重力収縮から円盤および原始星形成過程について、ダスト熱輻射の偏光パタンの観測予測シミュレーションを行った。前方と後方のポロイダル磁場による偏光のキャンセルにより砂時計型磁力線に特有な偏光パタンが見いだされること。回転により円盤形成が進む場合には、形成されたトロイダル磁場成分に特有な偏光度の低い領域が円盤の上空に生じること。回転と磁場の方向が食い違っている場合には、星なし等温収縮最終期から原始星降着期の初期にかけて、砂時計型でないS字状偏光パタンが現れたり、砂時計型偏光パタンの軸が円盤の短軸方向とずれて生じるが、進化が進むと砂時計型偏光パタンが復活することなどが明らかとなった。これらにより、星形成領域のダスト熱輻射の偏光パタンから真の磁場形状を読み解く基礎的理解が整った。 2.原始星アウトフローと星形成率の関係を調べるために、多層格子法の数値シミュレーションを用い、分子雲コアの重力収縮の過程と原始星、または星周円盤からのアウトフローの進化の過程について調べた 3.3次元輻射磁気流体力学シミュレーションにもとづき第1コア形成時の分子組成空間分布を求めた。分子の組成分布はほぼ温度分布で決まること、現在、クラス1天体で検出されているHot Corino分子が第1コアの段階でも存在することを示した。 4.渦巻銀河のスパイラルアームが恒星系と星間ガスが相互作用している動的な力学平衡状態であることを始めて示した。われわれの銀河中心の分子ガスリングの成因とその進化を明らかにした。 5.宇宙最初の星がどのような星であったのかを調べるため、原始星の降着進化の2次元軸対称輻射化学流体計算を行い、これまで想像されてきた太陽の100倍を超える超大質量ではなく40倍ほどの普通の大質量星となることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱非平衡にもとづく輻射輸送、ダスト熱輻射の偏光について、シミュレーションデータからこれらを観測予測する手法、計算法を確立し、プログラム化を行った。特に、入れ子状格子シミュレーションのデータを用いてこれらを行うプログラムは他のグループにはないユニークなもので星形成過程の高分解能シミュレーションと観測を比較する上で強力なツールを手に入れたことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1コアまでの星形成過程がどのように観測されるかはこれまでの研究においてほぼ解明できるめどが立った。今後は、原始星期の円盤およびエンベロープ系の進化を明らかにし、原始星によって加熱された、 ガス円盤およびエンベロープの観測的可視化研究から、観測天体がどのような進化状態にあるかを明らかにすることに力を尽くしたい。
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