Research Abstract |
本研究の目的は,新機能性物質の電子が織りなす秩序状態に焦点をあて,それと物質の特性の関係を解明することである.特に秩序状態(構造カイラリティおよび磁気カイラリティなど)を原子レベルで直接観察するため,新しい軟X線回折法を開発することである.この目的を実現するために,従来の軟X線回折装置にあらたに偏光解析装置および磁場発生装置を導入した.当初,10^(-8)Paという超高真空に磁場発生装置を導入することは,技術的に困難を極めることが予想されたが,磁石本体を真空容器に封入することによりこの困難を克服することができた.一方,偏光解析装置は,順調に立ち上がり,いままで見ることができなかったマルチフェロイック物質の軌道秩序の観測を可能にした.これらの装置の実現は,世界ではじめての試みである. 本年度,8月に磁場中軟X線回折実験を実現するため定常磁場用の超伝導磁石(最大磁場4テスラ)が完成した.また,10月に20テスラ級縦磁場パルスマグネットの製作が完成した. 今年度は,マルチフェロイック物質を中心とした研究を行った.この物質群では,文字通り強的秩序状態が多重に存在する状態がある.特に磁場誘起による強誘電性の発現は,実用上大変興味が持たれている.その中でも特に磁気カイラル構造による結晶対称性の破れを理解することが重要となっている.我々のビームラインでは,円偏光X線を有効に使用できるために,カイラル磁気構造を直接観察することができる今年度は,他大学,研究機関との共同研究を活発に行った.そして,様々なマルチフェロイック物質の磁気カイラル構造について軟X線回折実験を行い,それらの強誘電相の発現機構について新たな知見を得ることができた.
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