2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックな染色体構造変化を介した遠隔エンハンサーによる遺伝子発現制御機構
Project/Area Number |
21247002
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
城石 俊彦 National Institute of Genetics, 系統生物研究センター, 教授 (90171058)
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Keywords | 遺伝子発現制御 / 染色体ダイナミクス / 遠隔エンハンサー / 非翻訳保存配列 / 形態形成 / 進化発生学 |
Research Abstract |
MRCS1,MFCS4,MACS1は、Shh遺伝子翻訳領域の600-750kb上流の進化的保存配列で、口腔から下部消化管などのShh発現領域に領域特異的なレポーター遺伝子の発現を誘導する。これらによる単独あるいは協調的な制御機構を知るため、以下の実験を行った。第一に保存配列の機能を個体レベルで解析するため、それぞれのノックアウト(KO)マウスを作製した。その結果、MRCS1KOマウスは、齧歯類では進化の過程で退化したとされる小臼歯様の過剰歯を誘導すること、またMFCS4とMACS1のKOマウスは、それぞれ嚥下、呼吸に重要な口腔-咽頭器官と咽頭-喉頭器官の形成不全により新生児致死となった。さらに、それぞれのKOマウスとShh構造遺伝子のKOマウスとのcompound hetero個体では、表現型がより激しく広範になること、MFCS4KOマウスでは咽頭上皮特異的にShh発現が消失することなどから、これらがShhの組織特異的なエンハンサーであることを実証した。このように進化的保存配列のKOマウスが明白な表現型を示す例は希である。以上の結果、複数エンハンサーによるShh遺伝子発現の制御分担機構を個体レベルで解析することが可能になった。第二にEvolutionary Rigidity Assay(ERA)を行い、MRCS1が祖先型MFCS4内保存配列の進化的重複によって生じた可能性を見出した。MFCS4によりドライブされるトランスジェニックレポーター遺伝子の一過的発現部位(歯芽、舌味蕾)がMRCS1による発現部位の一部と重なることもこの可能性を支持した。さらに、MRCS1KOマウスが歯の進化にかかわると予測される表現型を示したことから、進化の過程で祖先型の制御因子からあらたな機能獲得因子が生成する機構を解明するという独創的な研究へと展開する可能性が示された。
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Research Products
(5 results)