2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的手法、雄の不妊化、天敵利用による外来侵入アリ3種の防除法開発
Project/Area Number |
21248005
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 正剛 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (90133777)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 徹 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (00332594)
村上 貴弘 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40374706)
|
Keywords | 生態学 / 昆虫 / 応用動物 / 遺伝子 / 外来侵入生物 |
Research Abstract |
1)ヒアリやアルゼンチンアリなどが国際空港や貿易港から侵入するのを未然に阻止する方法として、大量の養殖が可能なハチの一種オオタバコガコマユバチMicroplitis croceipesに特定アリの匂いを学習させ、検出させるという方法を検討した。その結果、このハチはアルゼンチンアリとヒアリの匂いを容易に学習し、特にヒアリはわずか1個体からの匂いでも検出出来ることが明らかとなった。2)神戸市内のアルゼンチンアリに汚染されている地域と汚染されていない地域で、ハエトリグモの1種アオオビハエトリSiler vittatusのアリ選好性を比較したところ、汚染地帯では高い確率でアルゼンチンを捕食するという選好性の特殊化が進んでいることを確認した。3)横浜港において道しるべフェロモンを用いた根絶実験を行い、恐らく世界で初めてアルゼンチンアリ個体群の根絶にほぼ成功し、この方法が有効であることを確認した。4)ニュージーランド・クライストチャーチに生息するアルゼンチンアリ個体群の分布・生態調査を行い、日本でもこのアリが東北地方中部域まで生息できる可能性があることを確認した。5)侵入してきた外来アリを迅速に同定するために、mtDNAのCOI遺伝子を用いたDNAバーコーディングの作業を進め、簡易同定法の開発に目処をつけた。6)不妊虫放飼に向け、台湾産ヒアリの未交尾女王を用いて孤児コロニーを作り、オスになる無精卵のみを産卵させるコロニーの作出に成功した。7)ヒアリを侵入個体群である台湾(桃園県)および米国(フロリダ州ゲインズビル)で採集し、前蛹個体の解剖および固定、染色体標本の作製、核型解析、FISH解析、制限酵素処理による高頻度反復配列の単離等の実験を行った。その結果、侵入個体群では雌雄ともに倍数性に大きな変異が見られること、および染色体上のマーカー遺伝子の分布にも大きな多型が存在することを明らかにした。8)性分化に関する分子生物学的研究に適したオオトゲハリアリについて、性決定遺伝子探索と遺伝子発現実験を行い、アリで初めてfem→tra2→dsxという遺伝子カスケードを確認し、ミツバチにおけるcsdと同じ役割をアリではfem遺伝子が担っている可能性が高いことを世界で初めて示した。 さらに、4月末日から5月初めにかけて豪州・ダーウィンにおいて開催された「外来侵入アリ類に関する国際シンポジウム」に参加し、「横浜におけるアルゼンチンアリの根絶実験」、「DNAバーコーディングによる外来侵入種の簡易同定法の開発」、「外来侵入種を拡大させる要因としての多女王性」について発表した。
|
Research Products
(27 results)