2011 Fiscal Year Annual Research Report
絶対独立栄養性・好熱性水素細菌のゲノム情報を基盤とした生理生化学的研究
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21248010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 正治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30193262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 博之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70291052)
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Keywords | 水素細菌 / 独立栄養 / マイクロアレイ / Hydrogenobacter |
Research Abstract |
(1)絶対独立栄養性の分子基盤 Hydrogenobacter thermophiles TK-6株においては、同一の酵素がアルドラーゼとフルクトースビスホスファターゼの両方の活性を触媒することを、タンパク質化学的実験から明らかにした。フルクトースビスホスファターゼについては、上記ポリペプチドよりも動力学的に優れた酵素が存在していることを酵素の精製により明らかにし、炭素代謝の流れが糖新生側に偏っていることを示した。 (2)新規窒素代謝経路の分子基盤 グリシンとセリン間の触媒を司るセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼを精製し、その性質を明らかにした。本酵素は、セリンを基質としてグリシンを生成する方向に傾いていることを動力学的解析により明らかにした。この時に生成する葉酸関連化合物は、DNA等の生合成に使われるものと推定れた。また、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼはスレオニンアルドラーゼ活性も触媒すること、さらには、その活性が温度依存的であることなどから、スレオニンアルドラーゼとしての触媒機構を提唱した。 ホスホセリンホスファターゼについては、結晶化さらには構造解析を行い、高分解能での結晶構造解析に成功した。 (3)呼吸代謝能多様性の分子基盤 本菌を水素あるいはチオ硫酸をエネルギー源として培養し、得られた菌体に対してトランスクリプトーム解析を行い、本菌のエネルギー代謝機能について、知見を得た。ヒドロゲナーゼの発現性は、エネルギー基質利用性に依存しているが、硫黄化合物代謝に関わる多くの遺伝子の発現性は、エネルギー基質利用性には依存していなかった。 (4)TK-6株代謝の応用的展開 本菌を応用的に利用するための展開性について、検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の柱である、(1)ゲノム情報を基盤としたTK-6株の進化系統的位置づけの明確化、(2)絶対独立栄養性の分子基盤、(3)新規窒素代謝経路の分子基盤、(4)呼吸代謝能多様性の分子基盤、の全てに亘り、充分な新規知見の蓄積が認められ、さらに、それを裏付ける成果発信も達成できていると判断できるため。なお、成果発信では、これまでに12報の論文を発表しており、今後もこれまで以上の発表が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づいた進捗を引き続き図るだけでなく、新たな技術導入による新展開をも図っていく。具体的には、(1)安定同位体を用いた炭素代謝の解析を基盤として、本菌の炭素代謝・エネルギー代謝の知見を深め、さらにものつくりなどへの基盤的知見とすること、さらには、(2)本菌への遺伝子導入技術が確立されつつあるので、その技術を用いた代謝改変並びに解析を行うことなどを、これまでの研究計画に加えて行っていく。
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Research Products
(9 results)