2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21251008
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 一夫 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 教授 (60174207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻田 淳一郎 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (50372751)
川本 芳昭 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (20136401)
中橋 孝博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (20108723)
田中 良行 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (50128047)
高宮 広土 札幌大学, 文化学部, 教授 (40258752)
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Keywords | 石棺墓 / 北方系青銅器 / 中国西南地区 / 川西高原 / 古人骨 / フローテーション / 歯冠計測 / オオムギ |
Research Abstract |
四川省甘孜チベット自治州炉霍県呷拉宗遺跡において発掘調査を実施した。これにより紀元後6世紀の製鉄遺構を発見した。その構造は非常に特異なもので、これまでに類例のない特殊なものであった。吐蕃という古代国家成立期において、チベットにおいて自立的に製鉄生産が始まったことを示すものであり、貴重な発見となった。今後はスラッグなどの科学的分析によって、その技術基盤の解明が期待される。また、20基あまりの石棺墓を発掘した。遺物からその相対年代は一昨年発掘した晏爾龍石棺墓より遅いものであり、この地域の青銅器の変遷を考えるにあたり重要な資料を得た。特に柄鏡など北方系青銅器の時空的な位置づけが可能となった。その石棺墓構造の変化あるいは墓群の構造変化に関しても重要な資料を得ることができた。晏爾龍石棺墓の人骨のAMS年代は紀元前1300年頃を示しており、当該地域最古の石棺墓であることが明らかとなった。また、晏爾龍石棺墓と呷拉宗石棺墓の古人骨の形質人類学的分析によれば、晏爾龍石棺墓の場合、北方系統の人的交流もあるが、呷拉宗の石棺墓の場合はほとんど等質の南方的な形質に転化しており、人的交流の変化も読み取ることができる。今後のさらなる古人骨資料の増加により、本地域の未解明な人的な系統について理解できるようになり、このための資料の増加を待ち望む。また、古人骨の歯冠計測によって親族構造の分析を進めている。これまで副喪抜歯の痕跡が確認されており、中国西北地域の青銅器時代にこの習俗が見られるところからも、その比較研究や両地域の関係性が理解される。さらに、晏爾龍石棺墓の墓葬内土壌のフローテンション分析により、本地域で初めてオオムギを発見することができた。11粒のオオムギを複数基の墓葬から発見されたことからも、資料の確実性が保証されている。文献にはその伝承が示されていたが、これによって青銅器時代にもオオムギ農耕が行われていたことが明らかとなった。また、古人骨に見られる歯根の虫歯の多さは、オオムギの粉食に起因する可能性が高まった。 さらに、ベトナムで開催されたIIPPA国際会議に参加し、研究発表を行った。会議後のエクスカーションではベトナム青銅器資料を実見することができ、最新資料からもベトナム北部と中国西南部の青銅器文化の深い関係性を検証することができた。今後この方面の研究も深めたい。
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Research Products
(6 results)