2011 Fiscal Year Annual Research Report
ラテンアメリカ社会の調和と対立に関する政治経済学的研究
Project/Area Number |
21310161
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西島 章次 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70116234)
高橋 百合子 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (30432553)
幡谷 則子 上智大学, 外国語学部, 教授 (00338435)
村上 勇介 京都大学, 地域研究総合情報センター, 准教授 (70290921)
宇佐見 耕一 日本貿易振興機構アジア経済研究所, 主任研究員 (50450458)
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Keywords | ラテンアメリカ / 対立 / 政治経済学 |
Research Abstract |
本研究は、経済的格差と政治的対立を相互に影響を与える連動した一つのプロセスと見ることによって、グローバル化・民主化が進む中のラテンアメリカ社会の調和の安定性/不安定性のメカニズムを、経済学、政治学、社会学の学際的分析から明らかにしようとしている。特に、コミュニティ、地域、国家、国際社会の各レベルで、グローバル化や民主化にともなう制度変更が個人、企業、政治家(政策担当者)の行動にどのような変化を与えたのかに注目するミクロ分析と、全体として社会・経済構造がどのように変化したのかに注目するマクロ分析、およびミクロとマクロの相互作用の分析を行った。この研究によって以下の事が明らかになった。1)ブラジルではグローバル化によって資源部門のポテンシャルが高まり、国民がより楽観的な消費行動を選択した結果、国内需要主導の経済成長が実現し、雇用の拡大により400万人近い人口が低所得層から中間所得層に移行、所得分配が顕著に改善した。2)ブラジルで成功した「ルーラ・モデル」はペルーにも影響を与えているが、社会的にも地域的にも政治勢力が分裂し、政党政治の伝統がなく政治家個人の争いに還元されてしまうペルーでは社会対立に発展しやすい。3)アルゼンチンでは経済成長を伴わないネオリベラル改革が失業と貧困問題を深刻化させ、国家が関与するコーポラティズム〈の揺り戻しが起こった。4)都市周辺部のスラム拡大に行政の対策が追い付かないコロンビアでは、住民組織が互助・連帯による生活環境改善に役割を果たしている。5)条件付き現金給付を広範に実施したメキシコでは、政党間競争が激しく、市民社会活動が活発であれば、社会政策が政治的操作手段として歪められることが少なく、貧困削減効果が高かった。6)ブラジルの内需主導成長は労働者の生産性が高まらなければ頭打ちになるリスクを抱えており、資源経済下の脱工業化の克服が課題である。
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