2010 Fiscal Year Annual Research Report
「マスキュリニティ」の比較文化史-公私関係の再検討に向けて
Project/Area Number |
21310171
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
三成 美保 摂南大学, 法学部, 教授 (60202347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
福長 進 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90189960)
田端 泰子 京都橘大学, 文学部, 教授 (20088016)
森 紀子 帝京大学, 文学部, 教授 (50241154)
長 志珠絵 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30271399)
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Keywords | ジェンダー / マスキュリニティ / 比較文化 / 比較史 / 公私関係 |
Research Abstract |
2010年度は、「『マスキュリニティ』構築のあり方」に重点を置いて比較検討した。検討の柱としたのは、(1)男性間のヒエラルヒー構築のあり方の文化的歴史的相違、(2)「マスキュリニティ」からの逸脱あるいは「マスキュリニティ」への同化の文化的特徴、(3)「マスキュリニティ」と「身体」の関わりである。 研究を深めるために、4名の研究者を順次招聘し、講演を行ってもらうとともに討論を行った。招聘したのは、ドイツ史関係、日本史関係2名、イギリス史関係である。メンバーでは、中世イタリア史(高田)、中国史(小浜)および、ドイツ史報告に対するコメント(三成・京樂)が得られた。その結果、次のような論点が提起され、課題が明らかになった。(1)中世ヨーロッパでは、キリスト教会の男性聖職者を「第3の性」としてマスキュリニティを自ら否定・超克した存在としてとらえることが可能ではないか。非男性的男性(第3の性)・男性・女性というヒエラルヒーのなかで、男性聖職者が自らマスキュリニティを否定することでヒエラルヒーの頂点にたつという構造があった。これは性の忌避というキリスト教の伝統に由来する。(2)大戦期イギリスでは、女性が制服(軍服)を着用することにより、マスキュリニティに同化するという現象があった。身体を服装で規格化し、女性が男性以上にマスキュリニティを求めた。こうした女性のマスキュリニティを研究に組み込む必要がある。(3)日本の男性史研究は、女性史研究との対比で登場するが、生活史・身体史をベースにした女性史の成果を十分にくみ取っておらず、ジェンダー視点が弱い。その結果、マスキュリニティを十分に対象化できていない。以上の成果と問題提起をふまえて、次年度は、男女の二元的思考の歴史性、公私二元論との関係をついて比較研究を進める予定である。
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Research Products
(13 results)