2010 Fiscal Year Annual Research Report
芸術家と工房の内と外-学習・共同制作・競争の諸相-
Project/Area Number |
21320028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 俊春 京都大学, 文学研究科, 教授 (60198223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根立 研介 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303794)
平川 佳世 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10340762)
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Keywords | 美術史 / 芸術諸学 / 工房 / 共同制作 / 競争 / アカデミー / 美術教育 / 徒弟修業 |
Research Abstract |
昨年度、スカルチョーネ工房とユトレヒトの美術アカデミーにおける若い画家たちの教育システムを検討したのを受けて、今年度も、西洋近世の工房における画家の養成という問題を考察し、主としてルーベンス工房に関する研究を行った。さらに、いわゆる親方画家の自筆作品と工房作品という区別が、近世に、どの程度意識されており、工房作品がどのように評価されていたのかという問題について、歴史資料に基づいて検討した。 工房における画家の養成について-ネーデルラントでは、画家を志す若者は、工房の親方の徒弟となって、3~4年間ほど画業の基礎を学んだ後に、目指す絵画分野(人物画、静物画、風景画など)を専門とする親方画家の工房に移って、助手として制作を手伝いながら、独立するための技術と知識を実践的に習得するのが一般的であった。また、生涯、親方画家の資格を得ることなく、工房の助手として雇用されて働く画家たちも多数いた。ルーベンス工房の場合、初歩段階の画家の教育を行うことはなく、既にある程度進んだ段階に達した若者たち、および経験豊かな画家たちが制作に従事しており、ルーベンスの構想に基づいて効率的に絵画を生み出すためのシステムが構築されていた。特にヴァン・ダイクがルーベンス工房で果たした役割を具体的に検討することにより、工房の親方画家の「もうひとつの手」としての助手に求められていた仕事内容の解明を試みた。 工房作品の評価について-西洋近世においては、工房による作品制作が一般的であった一方で、16世紀初頭から、絵画の作者に対する関心の高まりとともに、親方画家の自筆作品に対するこだわりが強まり、その傾向に対応して、工房作品に対する懐疑的な視線が生まれてきたことを、絵画制作をめぐる契約書や訴訟の記録などから検討した。併せて、工房による模写作品の絵画市場における取引の実態を示す歴史資料を収集した。
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Research Products
(4 results)