2011 Fiscal Year Annual Research Report
院政期の宗教施策に関する寺院文芸研究-鳥羽から後鳥羽院政をめぐる領域複合的解明-
Project/Area Number |
21320045
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
近本 謙介 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90278870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 泰郎 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (60193009)
上島 亨 京都府立大学, 文学部, 准教授 (60285244)
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Keywords | 宗教文芸 / 院政期 / 唱導 / 法会 / 汎宗派的考察 / 貞慶 / 縁起・託宣 / 遁世 |
Research Abstract |
院政期の宗教施策に関する寺院文芸が、法会や儀礼と密接に結びついていることから、両者の関わりを領域複合的に解明する試みとして、ロンドン大学SOASにおいて、研究集会「前近代の日本におけるあらたな法会・儀礼学の構築をめざして―ことば・ほとけ・図像の交響―」(5月12~13日)を開催した。本研究集会は、研究期間前半の研究成果報告の場として企画したものである。この研究集会には、本研究の代表者・分担者・連携研究者を中心として、研究領域を補う研究者を加えて総勢10名が参加し、欧州の研究者の報告と合わせて混成のパネルを構成して、多角的に議論を深めた。それぞれのパネルにおいては、「ことばによる法会の構築」・「テクストと図像の相関」・「政策と仏教儀礼」・「法会・儀礼空間の構築」・「法会を司る組織」に焦点を当て、多面的な法会・儀礼理解を進めた。研究集会からは、前近代の日本におけるあらたな法会・儀礼学構築の必要性が明らかとなり、その方向性についても一定の方向性が示された。 真言寺院調査においては、研究分担者上島が主導する勧修寺聖教調査が順調に進みつつあり、調書の確認作業等が進められている。南都寺院聖教調査については、真福寺に蔵される南都関連聖教の分析を進めるとともに、東大寺図書館に蔵される貞慶関係の唱導文献の読解を進展させた。美術・工芸関係の調査については、研究メンバーのこれまでの研究成果がロンドン大学における研究集会で報告され、併せて行った大英博物館所蔵品調査でも進展を見た。文芸関係の調査では、大英図書館所蔵文献の調査を実施して、今後の分析の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寺院関連調査については、2名の研究分担者がそれぞれ主導している継続的な調査が大きな進展を見せ、聖教目録作成のための確認作業や、展覧会実施のための準備に入っている。美術・工芸関係の調査については、関係メンバーが東アジア交流史の視点から海外調査を積極的に進めて成果を上げている。これらの研究成果については、国際研究集会や国内の学会・フォーラムの場で報告の機会を数多く持つことができている。それらの進展に重点を置いたため、法会・儀礼データベースの作成に関しての作業が幾分遅れている点が、計画遂行上努力を要する部分である。
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Strategy for Future Research Activity |
寺院聖教調査については、前年度の作業を継続して目録を完成させるとともに、地域の博物館による展示が企画されている部分については、その場も利用して研究成果を報告する。また、研究期間の成果報告の場として米国における国際研究集会を企画しており、研究メンバーのほとんどが参加して研究発表を行う。本研究の成果を米国の研究者による報告と突き合わせることで相対化するとともに、領域複合的解明の総括に向けて研究を進展させる。法会・儀礼データベースについては、一定の範囲での暫定的な成果を構築し、さらに展開させるための方策を講じる。
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