2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス啓蒙思想における<戦争>表象と<平和>表象の包括的研究
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21320060
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 淳二 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30282544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 茂樹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30145213)
増田 真 京都大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (10238909)
王寺 賢太 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90402809)
辻部 大介 福岡大学, 人文学部, 准教授 (30313183)
玉田 敦子 中部大学, 人文学部, 講師 (00434580)
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Keywords | 戦争 / 平和 / 啓蒙 / フランス / 例外状態 / 主権 / 国家 / 権利 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの班ごとの課題研究を統合すべく、他分野における多様な主題の相互関係を整理し一つの結論を導くことを目指した。そこで戦争・平和表象を、「習俗moeurs」の概念と関係づけてまとめるという方向性が打ち出された。 具体的には、平成24年2月21日に京都大学・人文科学研究所にて公開の研究シンポジウムを開催し、分担者の辻部・福岡大准教授が啓蒙期における「習俗」の概念について発表し、代表者の佐藤・北大教授がルソーの法概念と「戦士共同体」としての政治共同体のイメージとその「習俗」について研究発表をおこなった。ここで富永・王寺・玉田各分担者がコメントを加えて討論をした。 結論として次のことが得られた。1)戦争は、法的権利の例外的状態であり、法権利のぎりぎろのゼロ度を示す。ただし、2)ゼロ度という状態で法的権利を延長し継続するものである。そこで、3)平和の基盤には戦争状態があること。これは社会や歴史の成立する平面であり、歴史という以上は基底に戦争状態があると表象されること。(したがって、ルソーの「自然状態」の平和は、歴史の基盤とは別の平面であり、そのような他者性・異質性においてこそ、歴史と自然が捻れるように螺旋をなしていることが生じる。この表象については完成年度において詳しく考察が行われる予定である)このような「例外状態」の問題は、ルソー『社会契約論』における「死刑制度」にも反映されており、そこでは剥き出しの「人間(ホモ)」が権利を持つ「人格(ペルソナ)」と意識的に区別されているのである。例外としての「人間(ホモ)」という表象は、ルソーやディドロの思想において大きな問題となることが導き出された。 以上の論点は、これまでの啓蒙思想研究ではまったく触れられてこなかった視点であり、本課題研究の貢献である。完成年度におけるシンポジウムと論集編纂により、この成果を広く世に問いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分担者の在外研究などが複数生じたため、分野によっては遅れ気味のところもあるが、それをカバーする研究の進展があり、全体としては順調に進展して、完成年度を迎えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
完成年度(平成24年度)において、シンポジウムと論集編纂により、いよいよ研究の成果を公表する段階に達している。このため、本年は発表原稿の読み合わせ、検討を行う。シンポジウム後には、論集の原稿を検討して、印刷の手はずを整える計画である。
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Research Products
(5 results)