2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ人の文献史料にもとづく清朝前期の政治と社会に関する総合的研究
Project/Area Number |
21320131
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松浦 茂 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60145448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中砂 明徳 京都大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50237286)
村尾 進 天理大学, 国際文化学部, 教授 (10239478)
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Keywords | ヴラジスラヴィッチ / キャフタ条約 / トルグート / トシ / サンビアシ / 徐光啓 / 広州 / 澳門 |
Research Abstract |
研究代表者の松浦は、ヴラジスラヴィッチ=ラグジンスキー『中国の実力と現状に関する秘密の報告』の下訳を終わって、それを再検討した。ヴラジスラヴィッチはこの報告書において、清の政治、社会、経済、軍事力を分析する。その内容は正確で、現状分析も的確である。そして結論として、かれは軍事力で清を圧倒できたとしても、それに要するコストは莫大となるので、それよりは清と平和に貿易を行なう方がよいと述べる。キャフタ条約締結後の約100年間に、ロシアが清との友好関係を維持することに努めて、清との国境線を守り続けたのは、ヴラジスラヴィッチの主張に従った結果である。この報告の和訳は、ちかいうちに公刊する予定である。 松浦はまた「清朝の遣ロ使節とロシアの外交姿勢」を発表した。これは、1731年と1732年に清がロシアとトルグートに派遣した使節が、ロシアの官僚と行なった外交交渉の内容を明らかにして、ロシアと清の関係を述べたものである。新しい史料を発掘した重要な研究である。 研究分担者の中砂は「イエズス会士フランチェスコ・サンビアシの旅」を発表した。これは、中国におけるサンビアシの足跡をたどったもので、江南におけるキリスト教の布教について明らかにした。日本では従来こうした問題は研究されてこなかったので、中砂の研究は新たな分野を開拓したものとして、大きな意義がある。 研究分担者の村尾は「広州と澳門の『間』」を発表した。これは、ヨーロッパ人が広州と澳門の関係をいかに見ていたかを考えたものである。新たな視点をもつ研究で、価値が高いものである。
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