2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ・アメリカにおける「市民の自分史」の調査研究
Project/Area Number |
21320139
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
槇原 茂 島根大学, 教育学部, 教授 (00209412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 浩彰 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (40228028)
久木 尚志 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (50238292)
長井 伸仁 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (10322190)
中野 博文 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (10253030)
寺田 由美 北九州市立大学, 文学部, 准教授 (40285458)
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Keywords | シティズンシップ / 市民 / 自分史 / 物語(ナラティヴ) / エゴ・ドキュメント / 公共性 / アイデンティティ / ヨーロッパ:アメリカ合衆国:メキシコ:ソ連 |
Research Abstract |
2010年7月、12月の2回の研究会を中心に、本年度は次の二つの方面で研究を進めた。一つには、昨年度に引きつづき、研究代表者を中心に「市民の自分史」構想に関連した歴史学の動向の把握に努め、記憶、物語り、エゴ・ドキュメント、主体・エージェンシーといった領域を視野に入れながら、構想の見直しをおこなった。一方で各分担者は、研究対象を限定しながら、資史料をほぼ収集しおえた。フランスについては司祭と農民、イギリスは組合指導者、ドイツはユダヤ人妻を持つドイツ人作家、アメリカは女性(エリートと労働者)、メキシコは小学校教師、ソ連はトロツキー派知識人、これらのエゴ・ドキュメントの読解と分析をはじめている。そして全体構想と個別研究を突き合わせることによって、(1)史料に語られる「自分史」、(2)日常的実践・パーフォーマティヴィティとしての「語り」、(3)研究者による読解と歴史像構築という三つのレベルの分析と読解の重層性とずれに留意することが重要であることがわかった。また、シティズンシップについては、市民権に関する問題よりも、他者との関係における個のアイデンティティの問題として捉える方向性も見えてきた。すでに各分担者の個別発表も一巡し、研究協力者の助言を受けながら相互に批評し合ったので、共同研究としての凝集性も生まれてきた。徐々にではあるが、雑誌論文や著書による成果の公表も行っている。なおこれまでの考察の結果、われわれの意図する市民的主体の集合的歴史(像)を表すには、「市民の自分史」よりも「シティズンシップの自分史」の用語の方がより適当であることもわかった。本年度の実績を踏まえ、最終年度の2011年度には、研究成果のとりまとめを進めつつ、さらなる展開の可能性も探ることになる。
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Research Products
(10 results)