2012 Fiscal Year Annual Research Report
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21320152
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
狭川 真一 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30321946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 恒次郎 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30510177)
勝田 至 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (90211846)
山口 博之 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (90470278)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 考古学 / 歴史考古学 / 葬送墓制 / 石塔 / 火葬 / 副葬品 / 墳墓堂 |
Research Abstract |
研究は以下の項目に区分しており、それぞれで進捗を述べる。 [A]火葬の研究 本年度は「文献史料が語る火葬の風景」と題して、第4回中世葬送墓制研究会を奈良市の会場で実施した。古代と中世の文献史料から見える火葬の問題点を整理し、3名の報告を得、それぞれに対して考古学の立場から簡単なコメントを付け加えた。 [B]火葬人骨の研究 奈良県三郷町持聖院蔵の蔵骨器について、九州歴史資料館の協力を得てX線CT撮影を行った。その結果、蔵骨器中程以下に火葬骨が残存していることが判明した。それに基づいて容器内部の調査を実施したが、骨片に混じって底部付近から多くの小粘土塊を確認したことから、発見(昭和中期頃)後に一度取り出された後に再納骨された可能性が高く、納骨手順などの情報には有効でなかった。 [C]石塔と墓の関係に関する研究 本年度は大型石塔について、足利市樺崎寺跡の五輪塔分析の結果報告を兼ねて、足利市で「中世武士の墓と石塔」をテーマに第3回葬送墓制研究会を実施した。樺崎寺跡が足利氏の墳墓遺跡としても位置付けられることと、その意義について評価した。また関連遺跡について研究協力者に報告をお願いした。 [D]土葬墓の副葬品からみた葬送儀礼 平成23年12月10日に福岡県太宰府市で資料の見学会を行い、翌日には副葬品をテーマとした「第2回中世葬送墓制研究会」(会場:筑紫野市生涯学習センター)を実施し、一定の成果をあげた。 [E]墳墓堂の研究 平成22年度に山形県立博物館にて実施した第1回「中世葬送墓制研究会」の発表内容について、分担者等に対して研究総括の目的で報告文作成を依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた課題5つのうち、4つについては予定通り研究会を開催してその成果を整理するとともに、情報公開を行った。各研究会会場では、30~80名ほどの研究者の参加を得て、貴重な意見交換がなされた。また、海外の調査も、韓国とインド、中国の一部について実施することができた。日本との関連を指摘するというよりも、今回のテーマに則した観点では、日本国内での独自発展と基層信仰の根強さを認識するとともに、適度な海外(特に中国)からの刺激を受けて、歴史的な転換点では部分的に海外の影響を感じさせる資料もあった。日本における葬送墓制の変容は、単純な海外からの刺激だけで説明することは難しく、日本国内における精度の高い研究が望まれることを実感した。 ただ、石塔と墳墓のテーマについては、その一部である中世後期の墓制を知る基礎調査の予備会議を実施したが、対象となる資料数が膨大であることが判明したため調査方法を再検討せざるを得なくなり、この科研では実行不能と判断した。その分、中世前半期の石塔研究に力を注ぎ、第3回の研究会へとこぎつけた。また、進捗が伸び悩んでいる火葬人骨の研究は、ようやくそれに着手できたが、この実績概要でも報告したとおり、当初の目的を達成できる条件が失われていたため、残念ながら将来の適切な資料の出現を待たねばならない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたるため年間を通じて実施する作業として、成果の整理作業を行う予定である。研究に関する調査では、海外調査のうち、石塔関連調査として韓国(旧百済エリア)、東南アジアの仏塔調査を予定している。これまであまり指摘されていない南方の仏教の影響について調査を行い、仏塔の形状や供養の形態などで日本に影響を与えているようなものはないかを探索する。これまでの研究では、一時的な海外からの重要な刺激を認めることはできたものの、基本的な発展は日本独自のものと推測できる。しかしながら、大小の影響があることは間違いなく、その可能性は東南アジア諸国へも広げるべきであろうと考える。日本の墳墓への石塔造立に東南アジアで発展・変容した仏塔文化が日本に何らかの影響を与えていないかを探りたい。また、納骨作法の究明では不可能となった火葬骨の資料だが、人骨鑑定など別の手法も残されており、その可能性を探りながら研究を進めたいと考える。 個別の課題の総括はそれぞれの研究会を開催した折に実施してきており、すべて資料集を刊行し、研究会参加者や希望者へ配布し、情報を公開してきた。これについては重複して報告することは行わないが、総括的な報告をまとめる必要があるので、分担者それぞれの課題についてレポートを作成し、完了させたいと考える。 今回の研究を実施して、日本における中世墓研究の課題はかなり克服できたと思うが、あらたな課題が数多く見出されており、今後の研究にむけて問題点の整理をすすめ、これからの研究に活かしたいと考えている。
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Research Products
(8 results)