2011 Fiscal Year Annual Research Report
琉球・沖縄文化の形成と外的衝撃‐古代~中世並行期を中心に
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21320160
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
吉成 直樹 法政大学, 沖縄文化研究所, 教授 (80158485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 克己 法政大学, デザイン工学部, 教授 (30061237)
間宮 厚司 法政大学, 文学部, 教授 (30199913)
中本 謙 琉球大学, 教育学部, 准教授 (10381196)
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Keywords | 琉球弧 / グスク時代 / 城久遺跡群 / オーストロネシア諸語 / 『おもろさうし』 / 外来者 / 朝鮮半島 / 交易ネットワーク |
Research Abstract |
琉球・沖縄文化の形成に関して、グスク時代開始期の本土と朝鮮半島からの影響について検討するとともに、グスク時代開始期以前に存在していた在地の文化が新たに形成された文化にどのような役割を果たしたかについて考察した。結果は以下の通り。 (1)本土から「日本語」が琉球列島に伝わったのは、南九州において8世紀頃まで官制の通訳官が存在していたことから、早くともそれ以降と考えられる。琉球弧において「日本語」が使用された嚆矢となったのは時代的にみて奄美群島・喜界島の城久遺跡群(9~13世紀頃)であったと考えられる。したがって、「日本語」と語彙、文法の面で体系的な一致をみせる琉球語の成立は、おおよそグスク時代開始期頃であったと考えられる。琉球弧において在地の言語として有力な言語はオーストロネシア諸語であり、琉球語の中にその系統の語彙を見出すことができた。また、古代朝鮮語との比較を行った結果、『おもろさうし』の語彙の中に、古代朝鮮語で説明できる語彙を抽出することができた。 (2)琉球弧のグスク時代以降の発展は、土器の出土状況(カムイ焼や在地土器など)を考える限り、奄美群島以北、特に喜界島の交易拠点の影響を受けている人びと(交易者、技術者など)が渡来し、在地の人びとを圧倒した結果であると考えられる。また、11世紀半ばのグスク時代開始期のほかに、13世紀頃に 外来者によるもうひとつの画期があったと考えられる。この頃には奄美群島以北からの影響のほかに、朝鮮半島からの影響も受けていたことが明らかになった。 (3)『おもろさうし』の語彙の中には、本土に視点を置いた表現や、本土の中世期段階の語彙や語法が認められることから、その成立や編纂にあたっては本土からの影響が濃厚に認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄諸島以南のグスク時代(11世紀半ば~)の幕開けが、直接的には奄美群島の喜界島を中心とする地域からの集団の移住を契機にしており、その集団は九州の商人、高麗の商人や技術者などから構成されていることが明らかになった。この点ではグスク時代開始期が沖縄社会の内的発展によるものではなく、外的衝撃の影響が大きかったことを明らかにできたと考えており、「研究の目的」を概ね達成した状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
琉球弧と九州西海岸、朝鮮半島を結ぶ交易ルートは弥生時代の貝交易が契機になって形成され、後の喜界島の城久遺跡群も、この交易ルート上に出現することになる。この交易ルートはグスク時代開始期以降も琉球弧の社会、文化的発展に重要な役割を果たすことになったことは出土遺物(高麗系瓦、高麗象嵌青磁など)から明らかであるが、その交易ネットワークの具体的な姿はまだ鮮明に描けていない。この点を中心的な課題として研究を展開させたい。
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Research Products
(2 results)