2009 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪を行った精神障害者―刑事責任論と犯罪者処遇論の架橋
Project/Area Number |
21330018
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 輝之 Meiji Gakuin University, 法学部, 教授 (00182634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 陽二 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (30164221)
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Keywords | 犯罪を行った精神障害者 / 刑事責任論 / 犯罪者処遇論 / 心神喪失者等医療観察法 / 人格障害者 / 性犯罪者 / 薬物中毒者 / 地域における精神医療 |
Research Abstract |
1.本年度の研究では、心神喪失者等医療観察法(以下、「医療観察法」または「法」)の運用についてモニタリングを行い、以下のような結論を得た。(1)本法がわが国においてはじめてといってよい司法精神医療をもたちし、それが一部の触法精神障害者の社会復帰のために処遇について大きな改善をもたらした。(2)本法による処遇がこれまで治療が困難とされてきた精神障害者について治療効果を有し、今後その成果が一般精神医療においても生かされることが期待できる。(3)もっとも、地域における精神医療の分野は未だ十分ではなく、今後改善すべき点が多い。 2.本研究の大きな特色は、法学・精神医学という異なる学問分野の研究者による学際的研究である点であり、そのことから、本年度は、多職種の専門家による研究会を4回開催した。そこでは、特に、医療観察法の対象とはならない精神障害者等の処遇問題に焦点を当てた。医療観察法の施行により、その対象となる一部の精神障害者については改善がみられることは確かであるが、本法の対象とはならない人格障害者等に対しては、未だその改善に向けた処遇プログラムが存在しない。また、刑務所内の精神障害者も本法の対象外であり、刑務所内では十分な治療が行われず、さらに釈放後においては治療の継続を確保することができないのが実情である。これらは、医療観察法施行後において残された問題であり、早急な対応が求められているものである。本年度の研究会活動では、それらについて問題点の抽出を行った。 3.本年度は、フランスにおける触法精神障害者等の処遇の現状について、訪問調査を行った。同国は、最近の法改正により、危険な犯罪者に対する保安留置制度を設けるに至った。この立法の背景には、1990年代から次々に設けられてきた、性犯罪者、人格障害者等に対する社会内監視の諸制度の限界が広く認識されたことがあるようである。人格障害者、性犯罪者等に対する対応は、わが国おいてもなお残された課題であり、このようなフランスの新たな法制度の運用は、注目すべきものである。
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Research Products
(10 results)