2010 Fiscal Year Annual Research Report
変貌する資本主義と市民社会におけるCSRのあり方に関する基礎的研究
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21330021
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松本 恒雄 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20127715)
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Keywords | CSR / 企業の社会的責任 / 市民社会 / 資本主義 |
Research Abstract |
平成22年度の活動実績は以下の通りである。 民事法グループは、CSRと類似の思想が、古い制度、たとえばゲルマン法的な諸規制の中にも見いだされ、売買、賃貸借、団体の規制においても社会的責任や公共的性質を強調するものがみられた。しかし、こうした規制は、18世紀以降急速に失われ、企業と取引の自由が確立した。そして、契約自由の観点が、従来の規制を法律外の制度と位置づけようとしたことが明らかとなった。 環境法グループは、平成21年度から継続して分析を進めてきた化学物質リスクに対する国家と企業との責任分担の問題に加えて、平成22年度は、新たに広義の環境リスクとして注目されつつある水害リスクへの官民の対応について、調査検討を開始した。とりわけ、後者については、わが国においては、ほとんど法学的な分析がなされてこなかったため、9月にドイツにおいてEUおよびドイツにおける研究の現状について資料収集を行い、小論も発表している。 企業法グループは、ISO26000の発行・会社法の見直し作業における従業員代表監査役制度の提言等に象徴されるように、企業は社会において存在し、さまざまなステークホルダーとの関係において活動していることを重視する時代の流れに鑑み、ステークホルダーの利益と会社法の関わりを再度整理し直す作業などを行い、成果の一部を発表した。 労働法グループは、平成21年度ワーク・ライフ・バランス、労働者派遣に焦点を当てて行ったヨーロッパ諸国におけるCSRの理論的・制度的な動向についての調査・研究を基礎としつつ、労働者の労働条件や雇用に関して企業に望ましい行動を選択させるインセンティブの観点からCSRの意義を検討した。
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Research Products
(5 results)