2011 Fiscal Year Annual Research Report
移民の流入と統合過程-在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人の世代間生活史の比較分析
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21330120
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
稲月 正 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (30223225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 富夫 甲南大学, 文学部, 教授 (30135040)
西村 雄郎 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (50164588)
近藤 敏夫 仏教大学, 社会学部, 教授 (70225621)
山本 かほり 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (30295571)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
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Keywords | 在日韓国・朝鮮人 / 日系ブラジル人 / 民族関係 / エスニシティ / 世代間生活史 / ライフヒストリー / 生活構造 / パネル調査 |
Research Abstract |
2011(平成23)年度は、研究会を3回(4月、7月、1月)に開催し、(1)分析枠組みの検討、(2)調査データの分析、(3)調査の進捗状況の確認、(4)2012年度に作成する報告書構成案の検討などを行った。また、世代間生活史の時系列比較分析のための勉強会を3回(7月、9月、11月)行った。 分析枠組みの検討については、「構造化」論の視点の重要性が確認された。本研究の目的は、社会的に排除されやすいエスニック集団の社会統合を可能にする条件を明らかにすることにある。生活構造論的民族関係論では「バイパス結合」仮説が提示されている。これは理論的にはシカゴ学派の人間生態学に基礎を置く。しかし、新都市社会学の視点を援用すれば民族関係は構造的な文脈の制約を受けつつ展開しているのである。この両アプローチをつなぐ理論として「構造化」論に基づく枠組みを設定した。 調査も、前年度同様、q)在日韓国・朝鮮人家族を対象とした世代間生活史の聞き取り、(2)日系ブラジル人家族を対象とした世代間生活史の聞き取り、(3)ブラジルでの聞き取りを継続して実施した。これらの調査からは、民族関係やエスニシティの顕在化における社会移動の効果(世代内、世代間階層移動や地域移動の効果)が明らかにされつつある。どのような階層的地位につくかには、労働市場にどのように組み込まれるかによって決まる。同時に、工場での非正規雇用労働者としての地位からの脱却には、社会関係資本の蓄積が重要である(例えば、ネットワークを生かした自営業的成功)。在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人との比較分析によって、社会移動(自営業の展開や安定した居住)とエスニック集団の社会統合との関連が明らかになってきた。社会移動と民族関係との関連を複数の民族集団間で比較した研究はあまり例がなく、得られた知見は大きな意義をもつと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日系ブラジル人への世代間生活史の聞き取りと、そのスクリプト作成が予定よりも遅れている。日系ブラジル人への聞き取りの場合、ポルトガル語を交えたインタビューにならざるを得ず、通訳確保の問題があること、ポルトガル語を含むインタビューデータをテキスト化する際の明確な基準の作成が遅れていることがその理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度前半までに、在日韓国・朝鮮人と日系ブラジル人の世代間生活史の聞き取り調査は終える。あわせて、日系ブラジル人への聞き取り調査をテキスト化する際の基準を早急に作成し、トランスクリプトの作成・印刷・配布を行う。 2012年度後半は、報告書(論文)の執筆にあてる。報告書の構成案と執筆者案は2011年度に作成しているが、2012年6月の研究会で骨子を確定する。なお、必要に応じて補足調査を行う。
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Research Products
(14 results)