2011 Fiscal Year Annual Research Report
養老院・養老施設における処遇(ケア)の特質に関する研究
Project/Area Number |
21330140
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 多喜子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (20142648)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 律子 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (00172461)
|
Keywords | 社会福祉関係 / 社会福祉史 / 老人福祉施設史 / 処遇(ケア)の変遷 / ララ物質 / 韓国の養老院史 |
Research Abstract |
本研究の資料収集対象としていた10箇所の高齢者福祉施設の資料の収集を、今年度でひとまず終えることができた。そこで各施設の資料を、施設単位で整理するとともに、資料別・年代別・地域別に再度整理しなおすことが可能となった。その結果、日本での養老事業・養老施設における利用者記録や事務目誌の書式変遷、運営費の捻出方法、補助金や支援物資の扱い方などの比較が可能となった。 浴風会の個別資料からは、施設内での生活状況の記録が比較的多い70名について、時期区分の従って読み起こしを行った。その結果、利用者処遇記録が詳細に記載され始める時期が救護法実施後の1935年以降であり、戦争が激しくなる1942年頃からは記載がなくなることがわかった。10年足らずの期間であるが、浴風会での利用者記録の意義は、養老事業協会の雑誌「養老事業」を通じて、全国に伝えられたことも分かった。この影響が他の施設でどのように現れているかは、今後の資料分析で明らかになると考える。 また前年度から集中して収集しているララ物資では、それぞれの施設によるララ物資への依存の差が見られた。その違いは施設の基盤の差にあるように思われるが、今後の検討課題でもある。 さらに本年度は、歴史のある韓国の3つの老人ホームを訪問することができた。中でも1927年に京城養老院として設立した清雲養老院では、創設の頃の状況を伺う事ができた。他の2つの施設(東来養老院・信望愛療養院)は釜山にあり、2つの施設の創設者が姻戚関係にあることなどが明らかになった。しかし日本の養老院からの具体的な影響などを示す資料の発掘はできなかった。だが、信望愛療養院の創設者はテグ市内で養老院を始めて、その施設を知人に託して釜山に来たことがわかり、1927年の養老事業協会の資料にあったテグの養老院との関係を伺わせる結果となった。戦前の日本社会事業が、植民地政策の一環としての機能も果たしていた事実を明らかにするまでには至らなかったが、国内の施設の資料の収集と同時に、韓国の調査を実施したことで今後の両国の施設処遇を考えるきっかけとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前・戦後直後に設立され、当時の資料が残っており、かつ本研究の主旨を理解してコピーさせていただける施設の資料をほぼすべて収集し終えた。さらに浴風会を申心として個人記録の分析を開始したとで、当初の目的である施設の処遇(ケア)の実際の明らかになりつつある。そのことから、当時の処遇(ケア)の水準を今日と状況と比較して検討することが可能となっている。さらに、韓国の施設を訪問することで、当時の植民地での養老事業の実態を検討し、日本からの影響を考察するきっかけ得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である戦前・戦後直後に設立された養老院・養老施設が実践していた利用者処遇(ケア)について、その実態を明らかにし、その先駆性について検討するために処遇記録の分析を行う。さらに浴風会で行われていた利用者への処遇が、他の施設にどのように伝播していったのかを、今回収集した各施設の第1次資料の分析から検討をおこなう。また施設での食事内容から栄養状態を検討し、寄付の状況から経営のあり方を検討するなど施設史としての広がりを大切にして研究を継続する。本年度に訪問をした韓国の施設との関係を保ちつつ、日本の施設との関係を示す資料の発掘につとめる。
|
Research Products
(1 results)